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作品 - 20061204_781_1693p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ピンクのリップ

  ミドリ


机に足を投げ出して
エスプレッソを飲みながら
ぼくはタバコを咥えてる

日曜日の夕暮れ
気だるい西日が ブラインドの隙間から
射し込んでくる

缶ビールをパキッと開け
キッチンの妻の姿を
ちらっと 横目で見つめる

6時を過ぎたが
彼女はまだ遠いところを踏み抜くような
冷たい床に
スリッパも履かぬまま
テーブルにうつ伏せになっている

黒猫のような
ペロンとした素材の
プリントのワンピースを着ている彼女

ピンクのリップをそばだてる
生温かい息が
彼女の肩から 唇から漏れている

ぼくは思う
ポットの中の保温された熱湯
冬の外気の
冷たく
ツンと鼻をつく匂いが
窓ガラスにへばりつく

いつも胸が痛くなって
帰ってきた後の
2人きりの
マンションの一室
ぼくらいつも繰り返す

真新しい白い靴下を履いている
彼女の足元で
ゴディバの箱がへしゃげてる

ひっくり返されたままの
つぶれたチョコレートにへばりつく
キッチンの床と
まだ真新しい彼女の 白い靴下

文学極道

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