大通りをちらかす街灯が
踏み沈められた雪の道に
青白い絨毯をうすく敷いて
茶色い靴に包まれたぼくのあしは
どうやらわずかに浮いている様だ
光の花粉がふれあう音は
雪原に凪ぐレースのカーテンを被せて
遠くの針葉樹の群生が
底黒い澱にひたひたし
星をあるいは堰き止めている
ずっとむこうでは
祭りが行われているが
音が鳴っていたとしても
ぼくは静寂を聴くことにどうしても心奪われていて
気づかないだろう
きょうは新月なので
大通りはしずかに思索を失して
沼にしずんだまままばたきせず
時間がわからなくなる
時計の金具のつめたさが
うでをささやきで掻きわけると
キシツク腕を溶解する血液が
心臓のたたく肋骨をさわさら撫で
目の前にあらわれた手首には
線を交わした文字盤が
ほそい指針の影をふるわせていた
ぼくは祭りの露店が並ぶ区画へ
歩いていったが
靴音を落とした
会場となる通りの両脇には
露店や露天商が並んでいて
街の人々は今夜は寒さを努めて無視して
祭りを楽しむ
ぼくは酒を売っている露店に立ち寄る
棚に並んでいる
いろの息づく酒瓶の
クレヨンのようなひかりの列が
網膜にながれる絵をかいて
あかるい虚像を白くした
店主に云って
山羊のミルクで出来た温かいお酒をもらう
コップを両手で挟むと
ひとくち飲み下す
そうやって熱を感じながら
ひろい通りを歩いた
さまざまないろのひかりが咲いては散り
劇場のようだ
立ち止まり
ぐるりとまわりを見る
人々の口もとは
笑っていた
彼らは
みな盲だった
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選出作品
作品 - 20061130_702_1682p
- [佳] 祭りにて(ひかり) - Toat (2006-11)
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祭りにて(ひかり)
Toat