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作品 - 20060822_145_1497p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ある葬列

  Toat

ケンタウロス座のくらがりから
一房二房垂れつづく映像は垂柳
風のながれに解け絡まり点滅し
その楽音はきわめてつめたく。


目を閉じながら雨音だけ聴いている。
目を開けると世界がとおのく
丸まる景色、そうやって距離を遊び
幽体離脱しようにもおもったよりおおきなからだ
唯唯耳のみ風に運ばせ
遠く近くに編む映像

葬列は、

喪服は雨に濡れて蒼々と
「死者が誰なのか」
尋ねても誰も答えない。
掌の雫のとおい円み。
朝靄か雨霧か
そんなことはどうでもいい。
皆、顔は思い出せないくらい白くて、
実際、多分二度と思い出さない。
(でもふえたりへったりで
 これが全員かわからない
 ゼンインとはいったいなにかも)
葬列は次々と家を通り抜け
木々を薙ぎ払うこともせず
こんこんと粛粛と歩を進めた。[The funeral procession walked along ceaselessly in solemn silence.]
その跡はうっすらとなり星座になった。
誰も名を尋ね合わない。

  。
風が通り抜け或る者は
十字架を握り或る者は
数珠を握った。
僕は何も持っていなかったので、
自分の小指を握り、
握った。
時間が凍えて遅くなった。
目を閉じて世界を試し、
目を開けて世界を夢みる。
人の一生が
数時間か数日前に終わったのだ。
そして幾つかの朝と真夜中を経て
葬列が出来あがった。
シルクの匂いと
鼓動の音色のする葬列。
それは朝の光とともに
消えてしまうかも知れない。
消えてしまってもいい。


目を閉じると
誰かの映像が見えた。
目を開けると
風の虹色の歌がみえる。

文学極道

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