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作品 - 20060721_559_1431p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


わたしは今日迎えます

  一条

裸木にからまった一万匹の赤ン坊のおくびが無名の荒れ野を
占拠する 一滴の唾も分泌しないほどに空は乾いてしまった
黄色い液を全部吐いた道の交差で美しい鳩の首がひとつひと
つ折れ曲がるのをわたしはずっと数えている おまえは世界
に突っ込むんだ 周波数のひずみには いよいよ明かりが灯
され わたしのなりたかったわたしが今日わたしの前で悄然
と立ち尽くしている



きれいに飛んでいた鳩をぐるんと巻き込むように動かなくな
った空の渦動の下では なにもかもが思い通りにはならない
内臓が破裂した建物があった ちょうどおまえの肘掛がわた
しのデリケエトな後頭部位を叩き 完全に折れ曲がった鳩の
首時計が遠回りする決して鳴り止まないサウンド・トラック
は不気味な吃音カシオの電気ビート 爆弾の内部へおまえは
向かえ



    母 は こ れ か ら 歌 い ま す
    時 計 は 狂 い ま す
    わ た し は 美しい 精 神 異 常 で す
    お ま え の な り た か っ た お ま え なんて 嘘っぱち
 
 でいた鳩はぐるんと空を巻き込んで動かなくなった私はど
うやら何もかもがうまくはいかないので このあまりにもお
かしな器官を建物の肘掛に置き忘れたわたしのデリケエトな
鳩の首のとても美しい放物線は遠回りするサウンド・トラッ
ク不気味な吃でいた鳩はわたしの向こう側はいつも無効でし
た向こう側にはいつも無効でしたいつも無効でしたいつもわ
たしは無効でした

文学極道

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