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作品 - 20060710_256_1397p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


第二次性徴

  佐仲

私は昨日生れたばかりなのに、今日もまた生
れなくては。清流のせせらぎが、私を運んで、
気がつけば汚穢な海。思い出しました。やっ
と。私はあなたにしずめられたんだ。お母さ
ん。

目覚めると、さわやかな草原で純美なうさぎ
をレイプしていた。今まで味わったことのな
い、欲求。知らない。知らなかったの。こん
なの。オオカミたちは狙っている。私の、私
のうさぎをレイプしようと。おまえらなんか
には絶対わたさないぞ! ケダモノたちめ!

お母さんは、どうして、私が生れたのに気づ
いてくれなかったの。たしかに、これ以上は
ないというくらいに簡単に生れてきた。まる
で卵みたい。だけど、あんまりだよ。ひどい!
うさぎの純白の毛が血塗られてゆ、く。ああ
ああ ああ/


肌を焦がす陽射し
肌をなでるやわらかい風
肌を触れ合ういくつもの家族が
小高い丘のキャンプ場
垂直に下げられた無数の釣竿
眩しさにしかめ面の
あどけない子どもたちよ 
君たちは殺される
最愛の人に
水面に映るの
私の顔に
うきしずみ/


私は昨日生れたばかりなのに、今日もまた生
れなくては。うさぎの血走った目を覚えてい
る。私は自分がいつどこで生れたのか、分か
らないけれど。ケダモノじゃあない、ケダモ
ノなんかじゃ。緩やかに流れる清流が、今日
も私を追い詰めている。生れなくては。

文学極道

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