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作品 - 20060523_122_1284p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


五月 突風

  まーろっく

五月

わたしのなかを突風が吹き
新しい枝を揺らし
葉はいっせいに翻る

いく筋もの空行が草を分けて進み
口唇のかたちのみが記述を続ける

わたしは書きかけた一通の弔文を
部屋のテーブルに残してきた
開け放った窓のように
青い切手には雲が飛んでいた

南へ!
白い上着に風を孕み
目には光の痛みを突き刺す
それが5月の旅の始まりだ

街の角ごとに渦を巻く
人々の夥しい会話から
聞こえてくる夏の遠雷

きのう、安アパートの大家が死んだ
遠ざかりゆくすべての白い背中に向けて
棺の蓋は音高く槌打てよ!
       (父ちゃん七十三だったわ
         (お風呂で死んだのよ
             (ギュッとなって 
                 (ギュッと 

南へ!
葬列とともに心は北へ去れ
われさきに駆けてゆくわたしたちが
投げ捨てた重い鞄のように何も語るな!

五月
翻る数千の上着に
投げ込まれる夏の広告

五月
張り裂けた鯉のぼりが
数兆の精子を放つ夕焼け

華麗な客船のように五月は難破する

おお 叫喚のあとの全き沈黙
わたしたちの背を押し
この季節から誰もいなくなるまで
吹き荒れよ 突風!

文学極道

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