たえず流れゆく虚飾で彩られた十字路たちの、
過去の足音が、夜明けのしじまを、
気まずそうに囁いている。
燃え上がる水仙の咲き誇る彼岸は、
すでに、水底の夢の中に葬ってある。
落下する時をささえ続ける幼子が、
やさしく言葉で綾とりをする聖職者の午後が、
さりげなく黄ばんだモノクロの映像で充たされてゆく。
わたしは、溢れ出る、そして枯れてゆく出自が、
白骨のように、潔いまなざしで、
真夏を咀嚼する荒野を駆け抜けてゆくとき、
今日も、当て所も無く、
氾濫する炎をもてあます道化師のように、
偽りのみずうみをさ迷っている。
そして、爪垢ほどの重さの無いわずかの名声は、
絶えず枯葉のように舞い落ちて、
都会の妖婦に、いつか埋もれてゆくのだ。
静寂が波打っている。― 赤い血はまだ居るのか。
混沌が朽ち果ててゆく。― 青い息は、まだ聞いているのか。
わたしは、まだ、此処にいる。
見捨てられた世界の
止め処なく、沈みゆく地平線のはてに、
置き忘れた栞の一行のきらめきの中で、萌え出す、
手を差し伸べるあなたが、津波のようにどよめきを上げて、
押し寄せてから、凪いだ鬱蒼とした森の灯台になり、
垂直に横たわってゆく。
わたしは、運命が軋みをあげて、綻びる古城の季節に、
たとえ、抜け出せない寂寞とした厳寒の沼地のなかで、
もはや言葉を失った棒状の鉄杭になった足を束ねられても、
あなたの手を、しっかりと抱きしめて、
このいのちの絶えることの無い激痛を携えて、
瞳孔の暗闇の中に広がる、赤く染まる夕暮れを、
いつまでも、諦めることなく歩いていくのだ。
生まれ変わる瑞々しいいのちが一滴の源泉を射抜く
黎明の大鳥が訪れる、その時のために。
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いのちの情景
前田ふむふむ