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作品 - 20060513_908_1255p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


リジーの農場

  ミドリ




農場のメンドリは 
疑いようもない事実で
彼女は家庭におさまるような タイプではない
タマゴの産み手としては一流だが
誰の助けも借りずに彼女は 一人でタマゴを産む

シンディという名前のそのメンドリに
メロメロになっているのがリジーだ

リジーはやたらと態度がデカくて
ヘビや昆虫を捕まえるのも 得意だったが
農場の責任者に就いたその晩
リジーはシンディーを酒場に誘ってプロポーズした

彼女は態度を保留し
その場で不用意な発言を慎んだが
リジーをじっくり観察していた

「まるで何事にも無頓着な ヒツジみたい・・」
シンディーは心の中でリジーの事をそう思っていた

リジーは農場の経営を
ライバル会社から守った手腕を買われ
異例の抜擢をされた

大手には出来ない事をやる
リジーはジンの入ったコップ強く握り締め
シンディーの目を見つめた


農場で深刻な問題が持ち上がったのは
効率的な経営の為の戦略づくりに のめり込むあまり
農場を営んでいく 本来の目的を忘れてしまったからだ

ある日の午後
労働省から来た役人と
リジーは接見した

農場で悪質な違法行為が行われていると
匿名の通報があったと 役人は語った
通報が事実であるとすれば
場合によっては重い処罰が科せられる事でしょうと
役人は重々しく言った

それまで一言も口を開かなかったリジーが
ソファーから立ち上がって言った
好いでしょう
全てをオープンにしますよと 両腕を広げて言った

気の済むまで農場を見て行って下さい
農場の経営は
法を遵守した上で
すみやかに行われています

彼は晴れやかな顔で
役人の目を見つめ返してそう言った


夕方 執務室のドアをノックしたのは昼間の役人だった
「ミスター 通報は全てデマだったようです
 大変 失礼しました」

リジーは役人のその言葉に背を向け
窓の外に 西日の集まる畑を見つめていた
「今度 もし どこかでお会いするご縁あるとしたら
 もっと 好い話をしたいもんですね」
役人は
恐縮して頭を垂れて 部屋を出て行った

リジーはすぐに内線で秘書のクィーニーと連絡を取り
全従業員を今すぐ会議室に集めるよう
指示を出した

リジーの机の上には バラの花瓶と一緒に
シンディーの写真が 一番目に届きやすい場所に置いてある

彼女は シンディーは
俺がどんなことをすれば 喜んでくれるだろうか
そしてあのプロポーズに
いつかその承諾を与えてくれるだろうか

彼の頭の中のドライブ回路が
ブンっと強く回転し始める

仲間と親しい人たちを守りたい
それがまだ 街のゴロツキに過ぎなかった頃からの
今も変わらぬ
唯一無二の リジーの信条だ

文学極道

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