#目次

最新情報


選出作品

作品 - 20060508_790_1240p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


銀と赤

  苺森


天窓から睨む月の鋭い眼光
コンクリートの醒めた肌
薄明かりの白粉叩く鏡の前
流動体のゆらゆらする夢を頬張れば
牙を剥いた苛立ち、
硝子が口の中で鈍く鳴って
水銀の粒が唇を零れ落ちる、美しく

ときには砂のように
ときには水のように
若いリズムを刻みながら踊る踊る、

掌の上を踊る


まるでそれは生きていた


砕けた破片
噛み締めたら流れだした


美しく銀と赤


黒い涙、マスカラの睫毛でぱちんと弾けば
夜の孤独に滲みゆく
奥で潰れた声の破片が
舌の上
もつれあい転がる銀、銀、銀の

滑る滑る、
赤を

赤の


零さないで

乾いた
砂のように

こころは死んでいた
張り付いたいのち
内を剥がれ落ちるそれは
干涸びて


ふざけた血が 嗤う
ああ、

もう崩折れそうに
祈り疲れた
ねえ、なんて痛わしい空
なんて怠い未来


石女と体温計

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.