白い喘ぎ声は夕立のように降ってきた
公園の木立は身じろぎしてざわめき
回転をやめた遊具は聞き耳をたてる
母の横顔からあらわれる機関車
黒煙と蒸気のなかを進む黒い質量
線路の盛り土の上 貨車を牽いて
わたしの手はとうに風を孕んで
振られていた 母の背中で
汽笛を鳴らしてくれた 青い服の機関手
貨車の幾頭もの牛の目玉に
幾人もの母とわたしがいて
どこまでも赤い夕焼けを進んでいった
わたしが生まれた古びた二階家も
まちの菓子屋のガラス鉢も
水晶玉のなかで転がっていた
言葉はまだ見あたらず
にぎやかな音だけが耳にあふれていた
夜はまだどこにも訪れていなかった
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選出作品
作品 - 20060504_693_1236p
- [優] 機関車 - まーろっく (2006-05)
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機関車
まーろっく