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作品 - 20060419_192_1180p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ボンペイ・ブルー

  ケムリ

あなたが陸に上がると言うのなら
そんなの止める気なんかないのだけど
その時から海はジュネバーベリーの香りになって
手を繋いだ幼い二人が落っこちてきた

枯れた歌が針葉樹から降り注いで
福音の中戦ぐ獣たち もう花は咲かず
醒めた体温を泳いで 白骨を砕いて呑むのなら
それはきっと正しさに それはきっと正しさに

海辺を走る最後の獣
大陸が離れていくリズムで
もっと光をと深海へ落ちていく
あなたが陸に上がるなら

千切れた緑の匂いに蒸せて
そのまま走り出してきてしまったんだ
針葉樹の香る酒を飲み干して
青空の結晶をポケットからこぼした

塩化反応の燃える海の
離れ小島であなたが眠っている
声も無く沈んでいく歌を
繋ぎとめるみたいに

枯れた手のひらで滅ぶ獣たち
落陽は声もなく 音もなく
空に掻き抱かれ眠るひかりさえ
それはきっと悲しさに それはきっと悲しさに

あなたが陸に上がると言うのなら
ぼくは優しく滅んでいこう
もっとひかりを もっとひかりを
それはきっと愛しさに それはきっと愛しさに

文学極道

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