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作品 - 20051003_249_573p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


夜が来るまえに

  ケムリ

崩れ始めたりんごのふちで
濃紺の羽根の虫たちが 灯りはじめた街灯を
水面をわずかに冷やす風にのせて
雑貨屋の紙袋抱えて 家に帰ろうよ みんな帰ろうよ

迷子の影が抱きついてくる
焦げたにおいが遠のいていくさみしさに
ロングピースくゆらせて
枯れ始めた庭ははっかの匂いがする

はだかの猫たちが路肩で震えてる
笑えるなら笑えばいいと
ポケットの煙草の葉っぱ撒き散らして
無邪気な影が重たすぎるんだ 

ただ 夜になると いつも 落ちていく
穏やかな朝を呼んで来ると言うけど
この世の果てで眠り続けてる
あなたは想像の果てで待っていると

ぼくらは家に帰れる
歩きつかれた虫の温かさで
ぼくらは家に帰れる
洗濯機の中で乾いていく星たちに

西日を嘘にしたセーターの匂いが
立ち枯れた指先が世界に触れていく
あなたはすすきを揺らす風に疲れて
僕らはそこで再び出会うだろう

疲れた靴底を優しく重ねて
落ちていけるやわらかさ
あなたはそこで笑って
きっと 何度でも

文学極道

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