バスタブにはった湯
地方都市のホテル
モジュラージャックを抜いた
壁のカーテン
テーブルの上のミネラルウォーターが
温度を上げていた
駐車場にバックで
車を止めると
梅雨が明けたばかりの海
シーリングファンの
揺れる部屋
身体が疲れ果てていて
南風に伝ってくる
シャワーを浴びた舞が
濡れた髪を梳かし
タオルを巻いて出る
クッと背を衝かれるように抱いて
またキスをする
煽られて取れた
胸に巻いたタオルが
足元に落ちて
カマンベールチーズに
ゆっくりと指を入れた
ガブリと頬に膨らむ
カツサンド
5年前
会社の酒宴で
向かい合わせになった舞と僕
悪戯っ子のような笑みを浮かべ
僕の顔を覗き込むと
シャンパンを抜くみたいに
話かけてきた
2本の足をブラブラさせ
パーカーフードを被ったその瞳は
ピンク色した頬を
髪を顔にうずめ
銃ていで叩くように
テーブルにつっぷした
六本木で飲んだ後
ふたりは初秋の夜風を
ポケットに突っ込んだ
その場所で
星屑を寄せ合うように
ふたりは唇を重ね
そして突き放すようにして
交差点で別れた
ドンとふたり
仰向けになったビルの屋上
「会社を辞める」といった舞の
その五感をくすぐる声が
緊張の割れ目から
突き刺さったみたいに
空を見ていた
舞はバックから
リゲインを2本取り出し
パキッとあけて
「うっせー やつらだぁ!」と
大声で叫んだ後
ガブガブ飲んで
空になったピースの箱を
ヒョイとビルの隙間に向かって
思い切りスローイングした
最新情報
選出作品
作品 - 20050926_158_557p
- [優] 間隙 - ミドリ (2005-09)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
間隙
ミドリ