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作品 - 20050919_009_528p

  • [優]  バラ線 - 光冨郁也  (2005-09)

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バラ線

  光冨郁也

銀色の刺に、凍える、空気は、
青い空の下で、
白い、息をつき、声がもれる、
頬の骨に、拳が石のようにあたる。

わたしは、
バラ線を後ろに、殴られる。
放り出された、ランドセルの黒い光。
ふった手の指を、銀の刺で切る。
数人の笑い声を後に、
片方、靴のぬげた足を、見ながら、
膝を曲げて、土の上で丸くなる。
鼻をすすりながら、体をゆすっていた。
後ろに首を曲げる、
バラ線が、銀色に光る。

学生鞄を投げつけられる、体育館。
ブレザーをひっぱり、
何度も、級友たちが、
わたしに群がり、床に倒そうとする。
遊び半分のしつこい、数人相手に、
わたしは、声をあげて、つかみ、
(本気で)蹴りをいれ、腕をあげる。
見上げる高い天井が、回転し、
目に見えるものが、入り乱れ、
ネクタイが舞う。

/殴られ/
目を・見開き/
わたしの/腕の・白い包帯/
教師の・叱責する声/
校舎の・裏で/蹴られる/
わたしの・手の・ひらに/鉛筆が・ささる/
教室の・床に/点々・と・落ちる/
血が・黒い/
(みんな・敵・だった)//
床に・頭を・うちつける/
ジャムだらけの机の中。

わたしは片膝を落とし、
こらえ、姿勢を立て直す。
囲む影に、声が共鳴する。
彼らの一人に、ターゲットをしぼり、
腹に拳をいれ、
かがんだ背に肘を落とす。
動きのとれにくい中に、
繰り返す蹴り、床をはう彼の、
「なんで・俺ばかり・狙うんだ//」
悲鳴に近い、ふてくされた声。
頭を抱え、うずくまる彼は、
蒼白の、わたしの姿だった。
わたしは、
わたしに、
蹴りをいれつづける、
足がしびれる。
顔をしかめ、目を見開き、
喉をつまらせながら、
わたしは、
わたしの背に、痛みを与えつづける。
沈んでいく、体が重い。

小さい手で、
花のない刺に、自分の指をからめる。
残りの靴をひきずり、ランドセルを拾い上げ、
だれもいない道を、歩きだしながら、
わたしは下唇をかみ、
空をあおぎ、肩をゆすり、
声をふるわせ笑う、空気がゆれる。
わたしの握り締めた、
声のだせない、バラ線。
その向こうには、
雑草にゆれる空き地に、
石の上に、放られた靴のかたわれ。

文学極道

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