それは不思議な行列でした
新月の夜でしたのに
ぼんやりと照っていたのです
そこかしこからケタケタと笑い声が聞こえましたのに
誰も笑っていないのです
一行は静々と厳かに歩みます
この世の者ではないようでした
その中の一人が竹を担いでいました
竹には幾枚かの紺色の短冊と
幾つかの銀色の鈴が揺れていました
鈴はしゃりんしゃりんとかき氷の溶ける音を立てて
それがなんだか懐かしく思えまして
私は後について行ったのです
暫くして竹を担いだ男はこちらを向いて
薄うく笑い
ぽつ、と一枚短冊を取ってくれました
指を触れると仄かに青白色に光ります
私は小指で願い事を書きました
・・・・・・・・・・・る力をください
短冊は自然と舟の形に折られてゆき
その中に水が湧きました
夜の川の色です
いつしか笑い声は止んでいて
私はそれを飲まなければいけない気がして口に含みました
ほとんど匂いも味もなく心地よく冷え
鼻に抜けるごく微かな甘みに胸がすき
とても優しい気持ちになりかけたのですが私はその水を
吐き出しました
男はそれに怒るでもなく
笑うでもなく
悲しむでもなく
ちょうど墓石を前にした人が見せる独特の無表情さを見せて
すいっと背を向けた拍子に消えてしまい
私は取り返しのつかないことをした気持ちになりながら
見知らぬ山道に一人
笹舟を手にして立っていたのです
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作品 - 20050914_921_514p
- [佳] 銀の鈴参り - ヤギ (2005-09)
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