宇宙船がひまわり畑に着地した
宇宙人たちは
30分で着替えを済ませ
ハッチをしっかり閉じ
キーホルダーをポケットに仕舞った
クリーム色の彼らの肌は
人目を引く
チュー坊と言われたひとりが
ハンカチで額を拭きながら
「ちょっとウンコしたい」と言った
リーダーのポン太が軽く目配せすると
チュー坊は茂みの中にしゃがみ
ひとときの思いを過ごした
さっちゃんという女子中学生が気を利かし
そっとティッシュを手渡してやると
チュー坊はすまなそうな顔でそれを受け取り
きっちりと拭き取りながら
「悪いね」と言った
リーダーのポン太が重要な発表を仲間たちにした
「地図 持ってくんの忘れた・・」
カバちゃんという受け口の男が
交番に行っておまわりさんに訊けばいいと提案
彼は一度地球に来たことがあって
みんなから頼りにされている
「みんなで手分けして交番を探そう!」
ポン太はテキパキと仲間に指示を下した
果てしなく続く
カラカラの夏
宇宙人たちには汗腺がない
チュー坊は
星に残してきた妻子を思っていた
そう言えば上の子は今年 小学生だ
妻にいつまでも
内職の仕事をさせてすまないと思った
さっちゃんが
ふらりとソープランド街へ入って行くと
客引きがもの珍しそうに店内へすっこんで行った
茶髪のスカウトマンがホープを咥えてやってきて
さっちゃんに
「ねえーちゃん エエ乳しとるやんけ」
と軽くジャブを打つ
さっちゃんはビックリしてホッペを赤くした
彼女は農家の娘さんで
夜這いとかで
色んなえっちも経験済みだが
お金で体を売ることについては 両親も反対している
「まー 事務所で茶でもどや」
という誘いにまんまと乗った
押しの弱いさっちゃんは
宇宙人の
地球での就職組 第一号だ
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選出作品
作品 - 20050902_670_472p
- [佳] 宇宙船のさっちゃん - ミドリ (2005-09)
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宇宙船のさっちゃん
ミドリ