知っている
朝を焼く音を あれは
鳥たちの羽ばたき
そして
気づいている
羽を貫く冬を それがきみの
最も正しい姿勢だ
*
屋根に降り積もる 雪
私の中に降り続く 雪
ならば
雪に願いを立て
雨と流れてゆけ
*
いたるところ
息のけがれた雨はある
息を枯らした川がある
北行きの風に
海のありかを尋ねたなら
潮は来るだろう
おお らおお らあ
おお らおお らあ
私はくじらだ
波を伝ってゆけ
*
かつて
海に閉じ込めた 母
母を迎え入れた 海
くじらは鳴いた
救い出したなら
帰ってよいのかと
海はこたえた
星たちとの語らいに
陸の言葉はいらないと
*
時の頂きを泳ぎ
星の海に羽ばたくものは
ふりむかない
冬の最果て
夜よ
白く咲いてゆけ
選出作品
冬のくじら
丘 光平