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作品 - 20050805_134_375p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


牛飼い

  ミドリ



アメリカのポートランドで
夜はバンドでドラムを叩き
昼間はバスの運転手

昼下がりの公園で
君と目と目が合った瞬間に
大事なことが
僕の胸ん中で目覚めたんだ

恋人をつくることも
酒を飲むことも
無駄ではない
確たる結論を
僕らはきっと
生きていたんだ

ポートランドの午後11時
地下鉄でサラリーマンが
長椅子に座って
欠伸をかみころしている

彼はきっと牛飼いで
スラム化した現代の
人々の胃袋にヒレ肉を送り込む
店舗マネージャーにして
スーパー営業マン

鉄筋コンクリート19階建ての
その1階にフックされた店内を
せかせかと歩き回る牛飼いは

時計の真ん中で
まっすぐに12を指し示し
立ち上がる長針たちの
放牧マネージャー

タミル語とイタリア語と
ベンガル語とカンボジア語の入り混ざる
店内の
文明を預かる
まるで梵語研究者

そして僕らはそのミシガンという店で
ブルーノ・ノッリの曲をサラダ料理にして
即興で曲を叩く
まるで街は錆付いた沈殿物を
底で抱えるように変身していく人々の顔は
その止まり木のような店で
音とリズムを南へ運んでいく

人々はまた懐かしがって
アインシュタインというカクテルや
ベートーベンというジンを分厚い手で握りこみ
いかにもクールに
そして突発的に
その手つき口元へ次々に運んでいく

文学極道

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