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作品 - 20050719_914_334p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


灯し樹の下で

  ケムリ

このままゆらゆらしてたら世界は終わってた
そんなのが最高だって ずっと思ってる
背中に羽根をつけて海を目指す人たちみたいに
むせ返る夏の声と 降り注ぐ蝉の街へ

葉脈をリタリンが駆け抜けていく
鍔迫り合いの痛みが戦場に花を咲かせた
玩具のピストルの弾痕からは真っ白の花が咲いて
吸い上げる幹に緑の痛みが 濃い果実酒のように

眠れ眠れ 銅のうさぎみたいに
青く燃える海に水銀船が幾何学模様を描いていく
波打ち際に落ちた白いワンピースと
麦わら帽子にすがりついて泳ぐ女の子

夜にしか飛ばない鳥の群れが ビル群に着地していく
赤銅の錆に似た虫たちが 五つの足で涙を塗りつけて
嘘つきの唇から揮発していくアルコールのように
吸い上げる痛みに大樹は朽ちていく

灯し樹の下で 女の子は海を見ながら
ゆっくりブラウスを脱いで それから両手を空に突っ込んだ
麦わら帽子をさらった風は 蔦に捲かれてゆっくり腐っていく
葉脈を駆け巡る音の中 灯し樹の下で

文学極道

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