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作品 - 20050519_358_229p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


世界がオワだなんて、そんな!

  Canopus(かの寿星)


 0

プリズム

プラズマ
スコープの内側

気を失いそうなくらいに
星空だけがキレイだった


 1

キラキラと一本に光をうける溝のなかをビー玉が転がっていく


 2

--ここも行き止まり?
--ああ。すっかり壊死を起こしてしまってる。
--あんなにまっすぐできれいな道だったのにね。
--ごらん。あの道も粥状残渣でいっぱいだ。
--この大荷物どうしよっか?
--どうするもないさ。道端に置いて引き返すとしよう。
--…終りかもしれないね。ここはもう。
--ああ。終りなんだろうな。
--逃げちゃおっか。
--ハハハ。逃げちゃおっか。…でもどこへ?


 3

ぼくが犬の記憶を失くしてしまって
犬は存在しなくなった
花が消え 学校が消え 大聖堂が消えた
歌声 写真 夕焼け 父 友
ぼくは誰の記憶で生きていたのか


 4

ビー玉 あ ビー玉 あ ビー玉
レギュラーパルス レギュラー レギュラー レギュラー
イレギュラー
レギュラー レギュラー
手ぇて てぇて やすんで てぇて
やすんで

やすんで

ころころころころころころころころころころころころころころころころ


 5

波止場は避難する人々で、すでに足の踏み場もなかった。
「星が2、3回、大きくまたたいたかと思うと、王子さまはその光を浴びて、
 まるでスローモーションのように、ゆっくりと倒れていきました。」
ひとつの時代が終わろうとしていた。形勢は傾いていた。
囲碁本因坊戦、大盤解説、梶原九段は飄々と終局近しを告げたっけ。
「ああ、この一手で、この碁はオワですね。」
このことばを待ってた全国の囲碁オヤジは手を叩いて喜んだっけ。
終末を声高に叫ぶひょろ長い救世主を、少女が道端に落としてしまった
人形を、先へ急ぐ人々の足が次から次へと踏みつけていく。


 6

薄明のなか 混沌の時代からずっと
運命の糸を紡ぎつづけていた三姉妹が
とうとうキレちゃった

「けけけけ」と奇声を発しながら
ぼくんちの5階の窓から侵入してきて
大バサミでありとあらゆるものをブッた切って
長い髪と薄手のスカートをなびかせて
美しく踊り狂って
去っていった

ブッた切られた
スキマだらけの世界でぼくはへたりこんで

ああ これも運命なんだろな
うすぼんやり思った

文学極道

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