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作品 - 20050518_354_227p

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デイリー、トーク。

  Jussa Coonyuriet (Ohatu)


 蟻が泣いているのを空になって見ていた。
 ときどきアスファルトのひびわれにはまりそうになる。
 色になった身体を
 ずっと見ている。
 恥ずかしい、朝。
 蟻の泣き声と、彼女のクラクションは、いっしょ。
 蟻はどっかに行ってしまった。
 彼女は頭の毛をくしゃくしゃにする。
 彼女は蟻なのに、蟻は彼女じゃない。
 僕だ。

 それは落っこちそうな雨の粒を抱え込んで
 我慢している、雲。
 こういう日の彼女の思考は
 ごみ箱に捨てられたうまくいかない花束で
 風車を回すときみたいにできている。
 誰かが死ぬときに笑っていたとか、泣いてたとか
 そんなビールの泡。
 無神経に口を付けるおじさんは
 汚れているんだ。
 重たい雨の粒を載せて
 彼女は後ろ向きでスカートをはく。

 スカートをはいた彼女は
 蟻を踏み潰して
 涙が砂漠に落ちたときの
 じぃぅ、というひとときの音になった。
 僕は、
 その空に閉じ込められたまま。

 ねえ、蟻さん。
 いっしょに泣きたいけど。
 でも彼女、傘持ってきてないのさ。
 別々に泣こうよ。
 理由で。

 蟻はいつまでも泣いているのに
 それに名前なんてつかない。
 忙しいことを誉めてほしいの。
 だから、
 記憶なんかと結びつかないで。
 飛行機雲から向こうの半分は
 きっと豪雨。
 傘の無い人、ごめんなさい。

 

文学極道

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