叔父が僕の万華鏡を批判する
32番目の粒と33番目の粒を隔てる
その境界が許せない
そう僕をなじる
叔父は万華鏡の向こうに
破れた手紙と生まれた赤子を取り残し
僕と同じ歳になる
そう思い込む
父がいない
伯母がアイスキャンデーを僕に押し付ける
何故か酸味が強い
工場のライン管理はどんなものか
僕にはわからない
工場でアイスキャンデーが番号を手に入れる
僕は伯母からそれを手に入れる
僕には番号がない
父がいない
祖母が祖父の右手に煙草を押し付ける
焦げ目は玉葱のようでもあり
僕はカレーを想う
カレーの香りにつられて歩いた2丁目を想う
祖母は冷たい手で僕を引く
粉っぽいカレーと粉っぽい祖母の肌
祖父はカレーが嫌いだった
死んだ祖父の右手に祖母は煙草を押し付ける
母が消えた
文庫本に印字された小説が僕を走らせる
誰もいない漁場へ
魚心あらば水心
それは嘘だ
磯臭さの上に身を横たえ
文庫本の一行が何字あるのか数える
僕がわたしになってから何年目か数える
わたしに残された絆の本数を数える
わたしが父と母を幾度失ったか数える
その小説はしょっぱかった
タイトルは
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選出作品
作品 - 20050514_325_220p
- [佳] 海底ホームドラマ - stiGma (2005-05)
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海底ホームドラマ
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