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作品 - 20050509_303_215p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


あおい砂

  藍露

朝露。ちいさなつぼみから 柔らかにひらかれる 花。その一秒、一秒を写真におさめても 流れる時間は揺らめいて きらめいて 眩い。せき止めることのできない水のように 飛沫を上げて 透明な粒は飛び散っていく。反射する 光 と 影 が 作り出す 模様。広がる 波紋。ぱっと目を見開いて 反転したネガが転がり落ちる。

つるん、とこの世界に産み落とされた わたしたちは たしかに 動いているのだ。前へ後ろへ上へ下へ左へ右へあらゆる方向へ。どくどくと赤い血を滾らせて 泣き叫べ。おぎゃあ、おぎゃあ、と脈打つ 魂の叫び。静かなる胸のうちに刻まれた 慟哭。おおきな子供が顔を上げて 凛とした背中を見せる 日。影がどこまでも伸びて。

とどめることはできない。とどまることはない。生まれた日から 一歩一歩死に近付いて それでも一握の砂をつかもうとする てのひらの力。指先にこめた 願い。零れ落ちる 時間のすきま、すきま、すきま、そしてそこに何をみる。砂漠に這いつくばる 手足。枯れ果てた大地に生えるわずかな植物を慈しみ、美しいと思ふ。

墜落。海で発見された行方不明の飛行士の破片。青いほしの青い空から語りかけてくる 数十年にわたる 声。それは言葉でも数字でもなく暗号でもなく 何億もの石を砕いた砂のうた。耳を澄ませてごらん。空気が震えて 教えてくれる。宇宙の彼方から降り注ぐ流星群。きらきらとつかめそうで つかめなくて 望遠鏡。まぶたの裏で 数をかぞえる。

またたく星は見ている
あなた、とあなた、の瞳
あなた、とあなた、の手
あなた、とあなた、の足
つないで
つなげて

今日も地球は廻る
ぐるぐると自転しながら
歩いていく

文学極道

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