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作品 - 20050430_255_210p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


見つめないで下さい

  ミドリ



モガディシオの海岸に

その美しく輝く君の裸体を寝かし

TBSからカメラ一台をかっぱらって

世界中に生中継したい

時代は1970年代が良い

ベトナムでコーンフレークの缶詰を開く茂みの黒人に対して

あるいはサルトルがもの欲しげな指を組合わせる

サンジェルマン・デプレのカフェテラスにおいて

穏やかな心を取り戻す為のすべての人々の戦いの為に

夏の終わりのJR中央線

乗り遅れたおっさんが

ドアーに挟まれて言った言葉がそれで

「あまり見つめないで下さい」

多分そのおっさんは51歳で商社に勤める

肩書きは次長で

東大を2浪して入った卒業を間近に控えた息子が一人おり

普段から家族に憎まれ

生きてきた50年とやらの歳月に自信をなくし打ちひしがれ

挟まれたドアーの中で告白してしまったのだ

「あまり見つめないで下さい」

多分日曜日の朝

選挙に行くと言って戻らなくなるタイプが

こんなおっさんだ

例えば美しい女を見かけると

俺はDNAを駆け上がる激しい血の流れを感じてしまう

そしてアンドロメダの流星群に向かって祈りを捧げてしまう

大事なのは死ぬ前の愛だ

人の言葉はロゴスの祭壇を駆け上がるえくりちゅーるの勝利であり

カラの言葉を狂い抱く重層な音楽だ

地球からは今争いはなくなった

戦争はテレビの中でしか起こらない

君らはみな丸腰で愛に満ちている

愛について語り合うための

十分な長い夜もある

文学極道

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