学校には桜の木があります
たくさんの墓もあります学校で
死なずにはいられなかった人たちの
墓
新入生だけが声をききます
お昼にはそろって帰ります皆
しんと黙って一列になって
歩くときにだけきこえます
わたしたちには前が見えない
春はあまくとてもみじかい
眼前にひろがる
景色はすべてあなたのもの
すきなだけ眺めてください
そのあとちゃんと壊して
おいて
春はあまく飲みこめばにがい
友だちのうたう
賛美歌が花ぐもりの
昼の呼吸を濃密にします
それは四月の
うつくしい遊び
いつか誰もが学校に慣れます
墓は土くれを撒き散らしながら
拡がる期待に満ちて
います
選出作品
四月の遊び
軽谷佑子