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作品 - 20050422_175_194p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


闇は私を取り持つ

  望月 悠 (望月からHN変更しました)

けさはずっとへこんできたのだ。音もなく
餌場にはなやぎをかんじた私は、左手にま
さかりをにぎったまま山に入りました。日
が暮れるよりもさきに雑草のにほいが着物
のすそに入り込んでくる。時代のゆれは激
しく私はなんども揺さぶられたのだ、まだ
なおも。背中に向かって走ってくるものが
突き抜けられずに親指の先で停滞している
捨て駒のかいてんは早いのだ。あまりに早
いので私は目を回す、山のおそろしさが結
局はうるささに負けてしまうとき、餌場の
おがくずに混じっている異物をまさぐる手
がとまる。私の手ではない。もっと白くて
もっと滑らかな回転率だ。私が作業をとめ
ると、そいつも作業をやめておがくずがは
らりはらりと散りゆく。私の重みがかけら
れると、痛みに涙が出てくるだろう、竹筒
につたわってそれは土くれに潜む蟻の親子
に注がれる。ぷかり、ぷかり。 叩かれる
と啼かないが、地面は踏み固められるごと
に泣き叫ぶ、それは私を中心に痛んでゆく
鳴き声だ。私は走った。もう一人のそいつ
がおがくずから抜けてあの密林に逃げ込む
のを目撃した私の足は、自然に踏み固めら
れた美しい軽石の上だけをぬけるようにす
べってゆく。美しいだろう、軽石。臼でつ
いたあとのように湯気の立ち上るような、
軽石、そいつのあとを追って、私の背中は
影になっていた。涙はまだ軽くならない。
林をぬけると、ひときわ際立った沼があっ
た、睡蓮の花のまわりをわっかが、取り成
して、そいつはまだ笑っている、嘘の音楽
がながれているがこれは罠だ。騙されては
いけない。私は、遠い力の引き合いに取り
持たれて涙を糸のようにあの空に舞い上げ
ている。それはそいつも知っていたことで
それは、そいつの髪の毛が伸びすぎたから
静かに静かに、夜の闇に溶かしてゆくので
あって、それはたしかに私の足の重みすべ
てを理解するだけの闇の深さであった。

・・・闇は、私を取り持つ

それは、まだあの暁の先端まで走らなけれ
ばわからない秘密。それは、そいつさえも
知らない秘密。綺麗な森林です。それは、
腕をまぶしくして、目を開けなければいけ
ない速さでまだ、まさかりは、まさかりは
私の左手に、それはそうして、黒光りして
いる。あの星は太古の森林の狼なんだよ。
そいつは、笑っている。ここからどれほど
いっても、何かが軽くなるということはな
いのに、なおも、私はそいつを追いかけて
それは、私の闇を取り持っている。どこに
それはあるのでしょうか………。

文学極道

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