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作品 - 20050418_136_184p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ねじ式クロニクル

  藍露

折れた 爪 破れた 膜 割れた 唇 かき混ぜて
こどもの輪郭を形作ろうとしても
流れ出す泥のようにとめどなく
もう還れないとわかっていて
それでも尚、巻き戻そうとする
ねじ式クロニクル

鍵穴を覗いたのは あの子
樹海へと続く 道
幼い蜜蜂を呼んでいる 花園
柔らかな肌は誘惑に弱い
知らないことを知らない秘密、は
甘酸っぱい味がする

底のない沼があるという
それは少年少女を呑みこんで
ずぶずぶと成長していく おとな 
おおきなものがちいさなものを食べる
食物連鎖、の一部

あちこちに散らばった 羽根
毟ったのは 後ろ向きに堕ちたものたち
飛び立てない駝鳥の舌
卵の殻は 固い
岩にぶつけても 皹が入るだけで
中身を見ることはできない

いくつもの頭が泡の向こうに消えていきそうで
沈んでは浮かび、浮かんでは沈む
カメレオン、カメレオン、
きみはどうして隠れているんだい
いいえ、隠れてなんかいないさ
周りと同化してるのさ

帰り道はない

風の音色になった見えないこども
ひゅうひゅう、と吹いている
ひとり、ふたり、さんにんー途絶えることはなく
次から次へと鍵穴は作られて
見つめる瞳が待っている

もう還れないとわかっていて
それでも尚、巻き戻そうとする
ねじ式クロニクル

金属質の鈍色、
ぽろぽろと耳から零れ落ちている。

文学極道

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