扉を開けて
そっと 足を踏み入れる
次の瞬間
厚みのある匂いが鼻孔にからみつく
夏は夕暮れ
窓辺の
白い椅子に
蝉のような生きものが座っている
その
爪ばかりがきりきりと伸びた指さきは
たまらず 求めてしまう
光 それは
まだ 家に帰りたくはない子供たちの頬を
薔薇色に染めてゆくのだろう
喉を枯らした僕は
生ぬるいソーダ水を飲み
外から窓を覗いていたことを
ふと
思い出す
夏の終わり
椅子は
音もなく 倒れている
夕焼けの窓辺に
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選出作品
作品 - 20050411_054_172p
- [佳] 窓辺の椅子 - 丘 光平 (2005-04)
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窓辺の椅子
丘 光平