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作品 - 20050330_954_149p

  • [佳]  垂直 - 丘 光平  (2005-03)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


垂直

  丘 光平

行って来ます


新たな
一日分の死を計りにかけると
私の朝は昇る



午前

世界の路上で
小猫は息を絶える
そのために
車は道路を走るのだ

私はおまえたちの文明を知っている
その文明の血は私にさえ流れている
見よ
われわれには
まだ 歩むべき足がない
われわれの足には摩擦がない


ただ
無実の死が
地球を赤く湿らせるとき
世界の中心は
おまえたちの文明を恥とはしない
私の無抵抗こそ恥とするのだ

そのとき
私は垂直する
恥もなく
死に触れたものとして


さあ
おまえたちが気に入らないのなら
ベルトコンベアーで運ぶといい
私の遺体を
このやっかいな不燃物を
垂直のまま
路上に突き刺しておけ



午後

世界の病室で
被害者は息を絶える
そのために
監獄のベッドは増えるのだ

私はおまえたちの法律を知っている
その法律の血は私にさえ流れている
見よ
われわれには
まだ 学ぶべき心がない
われわれの心には角度がない


ただ
無情の死が
地球を赤く湿らせるとき
世界の中心は
おまえたちの法律を責めはしない
私の無秩序こそ責めているのだ

そのとき
私は垂直する
責めもなく
死を汚すものとして


さあ
おまえたちの邪魔になるのなら
法廷から叩き出すといい
私の遺体を
このやっかいな不信物を
垂直のまま
病室に
突き刺しておけ



夕刻

世界の戦場で
民間人は息を絶える
そのために
兵士は靴を磨くのだ

私はおまえたちの平和を知っている
その平和の血は私にさえ流れている
見よ
われわれには
まだ 立つべき大地がない
われわれの大地には重心がない


ただ
無数の死が
地球を赤く湿らせるとき
世界の中心は
おまえたちの平和を咎めはしない
私の無邪気こそ咎めているのだ

そのとき
私は垂直する
咎めもなく
死を語るものとして


さあ
おまえたちの足手まといなら
手足を縛りつけるといい
私の遺体を
このやっかいな不純物を
垂直のまま
戦場に
突き刺しておけ



零時

低温な
一日分の死を計りからおろすと
私の夜は沈む


お帰りなさい


その
赤い瞳へ
世界の暗殺者は帰ってくる

文学極道

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