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作品 - 20050319_870_132p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


クライシェの星

  佐藤yuupopic

先刻、起きたら

姿
鏡に映らないし
裸足で降りた
春迫る中庭のグリン、濃い影、落として揺れてる
のに、わたしにだけ、影がない

(わたし)
棘に足、取られて
こんなに血がにじんでるのに
痛くない

(じき、)
明るい日曜の昼日中
鉄塔にも
乗り捨てられたポンティアック6000STEにもあるのに

(死んでしまうのかな)
わたしにだけ、影がない


(一昨日

紙幣五枚、とバミリオンイエロのキャンディ両手いっぱいで、わたし、買われた
あんなふうにしてお金、もらうの初めてでひどくびっくりした
断ったのに、
キャンディ、もほんのちょっとだけで好かったのに、
ど、してもくれたがるからみんなもらった

かわりに
「内股の刺青。
(去年
フランクフルトで友達になった
キーファーに似た面立ちの若い彫り師が入れてくれた
日本では見えない星座の、
形)
美しいから俺に頂戴」
て欲しがるから、たぶん二度と会うこともないけど、やさしく触れる入り方も、
指も、それと、声も、悪くないから、

あげた)


先刻、起きたら

ああ、
違う。
きっと
眠ってるの、起こさないよ、にベッド、滑り出て
靄がかる白い朝を
タクシーが拾える処まで
(ただ、ずっと
キャンディ、かすかに、甘い、くちびる、噛んで
自分のつま先だけ、しか見てなくて)
一人
歩いてた時から
既に
こうだったのに気づいてなかった
だけ、で

(刺青、あげてしまったから、)
理屈、わかンない
けどアタマじゃなくて、ここに、すとん、と落ちるみたく
そう
わかった

クライシェが彫ってくれた、

いつの間にかわたしの一部じゃなくて全部になってたンだな、
て今更
右足のつけね、さみしい
わたし、あんまりに、うんとバカで
そんなしても、もう戻ってきやしないのに

声を上げて
泣いてしまった

文学極道

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