ぼくの知らない光
ぼくの知らない舞台
ぼくの知らない地平
君は舞台の袖で出番を待つ
淡い照明が
ツンと顎をあげた横顔を浮かべる
新しくおろしたシフォンのチュチュ
柔らかな菫色のトゥ・シューズ
小さな希望に膨らみかけた胸 覚えたてのパ
君は舞台の袖からまぶしくプリマを見つめる
アダジオからアレグロへ そしてパ・ド・ドゥ
速度を増していくピルエット
アラベスク・パンシェ グラン・ジュッテ
君の 外側を向いた指先とつま先が小刻みに震える
君の知らない闇
君の知らない北風
君の知らない茨の荒地
いや 本当は
ぼくもまだ知らない
コオル・ド・バレエにも
ぼくは君だけに視線を送るだろう
君の指先からつま先から こぼれ落ちる光の曲線を
ぼくは喜んで仮面の男になって
すべて飲み干そうとするだろう
プリマの賞賛に鳴りやまぬ拍手のなかを
君は両腕をあげ つま先をたてて
群衆の一人として旅立っていく
ぼくの知らない舞台 ぼくの知らない地平へ
最新情報
選出作品
作品 - 20050216_522_74p
- [佳] Pointe (ポアント;つま先で) - Canopus(かの寿星) (2005-02) ~ ☆
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
Pointe (ポアント;つま先で)
Canopus(かの寿星)