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作品 - 20050110_258_34p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


冬と畜生

  月草原

夢のなかの日射しは、どこまでもあつく
ぼくの影はみあたらない
ホカホカと湯気だつ石段を昇りつめると
みにくい狛犬が
落葉焼きの番をしていて
ドタぐつで もえた灰を踏みつぶそうとすると
さすが夢のなかの狛犬で
ばちあたりめっと吠えこんで
いまにも台座から かけだしてくる
冬のいりひ
うりこ雲がよこに這ひ
ぼくは畜生だった。

柿色に染色された
畜生のはだが地平にとろけ
どぶ河から海べりへとつづく
みちのりを おぼれながら
ぼくはあお向けになって
這ひあがろうとする
畜生の殿だった。
生ぬるいみずが
じょぼじょぼ
ぼくの背を
なめる
くそっ
たえられん
夢のなかだ
だれだいったい
どぶ板をはずす奴
ふやけたひと皮むけて
ぼくの頭を ひょいすと
またぎながら逝ってしまった。
畜生のはだが 地平にとろけ
ああぼくの影が ふっとうした泥にとける。

やけどする雪がまふ
冬のいりひ
海べりをゆさらゆさら
ぼくをさがしつづける きみのよこ顔
どぶ水をのみこんだといふ
きみの口元にぶらさがったひと皮を
畜生畜生 ひと皮むけば畜生だっ
と いつ叫ぶともしれない
ぼくのひと皮を 手にして
きみは耳にかざってくれるのだろうか...

夢のなかの日射しは いよいよあつく
柿色に染みた
ぼくの影
うろこ雲がよこに這ふ。

文学極道

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