おんなは、国道をマイナスの方向に横切った
足を引きずり、
店に現れたピアノ弾きは、後ろ手でロープを緩め、
慣れた手つきでdEad Cow blUesを演奏した
ドミソの和音に支配されたその音楽は、ら知#れ、知#れそ、靴擦れ、また、靴擦れだ
となり街の石油コンビナートから、
煤煙が空を、
洞察的に立ち上がっていくのを、
世界中に設置された火災報知器は、
ただ静観している
突如、出張所から、一台の消防ポンプ自動車が出動した
そいつはフル装備で、赤色灯を回転させ、
いつだったか、
妊娠したおんなの腹に黒い海が見つかった
海はみなみの方向に流れ、
やがて星々へとなった
卵形のいまいましい星々が、
おんなをいれものにする
おんなは、
いまいましいむすめをだきかかえた
わたしのむすめがつくった童話は、
赤い兎がうそをつくお話で、
むすめの皮膚は、
お話の途中で、赤くただれた
草原が赤い兎を飼い、
老婆からの電話で目がさめた
わたしは、ながれていくものを相手にしているのだ
むすめがつくった童話には、
けつまつがなく、
ぬりえからはみだした、赤や黒がうみにながれていく
にんしんしているおんなの顔を、
ひとつ汚すたびに、
むすめは、あたらしいコインを手に入れた
コインをたくさんあつめると、
好きな人に出あえるという恋まじないのようだ
時計の針が、
ぐにゃりと折れ曲がり、
むすめは、わたしと目があうと、
針の折れ曲がったほうこうに、
敬礼をしていなくなった
あなたがまだうまれたばかりのころ、
父親によく似たやさしいクジラと泳いだことは、
忘れないで、うさぎちゃん
おれは、
牛が殺されるのを待ちながら葬列の先頭がどこにも見つからないことに
気付いていた
そいで、
死んだ牛のブルースが、
暗号的に処理される棺の中、感染した販売所から百万頭の牛のドミソが、
一匹残らず失われていくのを、
加えて何かを、
鎮火した消防ポンプ自動車は、朝焼けの国道をひきかえした
何を鎮火したのかは、
いつまでもわからないまま、
あのピアノ弾きが、
ゆっくりと、おもむろにdeAD BeEf blUEsの演奏を始めるころ、
その音楽に耳を傾けているのは
静かにしろ、ここは、警察だ
- ミドリ :
こんばんは、一条さん。
作品のあちらこちらに、マンホール(メタファー)の蓋が、パカっと嵌めこまれた、そんな街路を行く気分になりますねー。
ここに赤いフェラーリに乗った、ガスパールを、疾走させたい気分になってきますが。
ドレミの音を販売する、ガソリンスタンドの百万頭の牛とかね。
石油コンビナートの地下で、妊娠した女は、その胎ん中に、カスピ海を孕んでいるとか。
しかもその海水は、それちょっと濃いねぇ、みたいな。あの子供ん頃、夏によくのんだカルピスの味を思い出すわけですが。
ここらの描写は、もはや他の追随をゆるさない、一級のポエマーの手さばきを感じさせます。
特に海の中で暗号のソロバン処理をする、クジラの事務員さんは、実は三軒茶屋の駄菓子屋さんだった!って場面が、特にこの作品を象徴する場面になっているような気がします。
しかし語りつくすとキリがない、シュールという言葉では軽すぎる、実地に訓練された、レスキュー隊員の太腿!といったとってもブルな感じがしますね。 ('07/03/01 21:38:14)
- 宮下倉庫 :
こんばんは、一条さん。
この詩ですが、(中東の?)油田の風景とか、狂牛病っぽい記述とか、静観している火災報知機とか、そういうでかくて現代的な部品が出てくる一方、娘と母親というごく身近な部品が出てきたりして、ちょっと似たような作品を、かつて一条さんは書かれていたような気がします。このふたつの、うまく組み合わない部品をくっつけて、ちっちゃい中にでかいのが収まってるみたいな、でかいんだけど同時にちっちゃいみたいな作品を書こうとされているのだろうか、そんな風に思いました。
作品全体の印象としては、即興っぽくて、途中で少々息切れしましたが、僕はこういうのが好きなので。後、
>卵形のいまいましい星々が、
>おんなをいれものにする
ここがいいと思いました。 ('07/03/01 21:42:03 *1)
- 池中茉莉花 :
何となく、「女」として共感のもてる詩です。
すごく雰囲気が文章を追うごとに揺れている感じがしました。
茉莉花の他愛もない質問:
とりとめもないコトバがどんどんながれていく子どもというのは
すごく特殊に知的障害の子どもに現れると何かのほんでよみました。
たとえば、山下清の文章。私は大江光さんの音楽にもとりとめなさ
を感じます。そういうのは、念頭にあったのでしょうか?
(スルーしてくださってけっこうです) ('07/03/02 09:44:31)
- 平川綾真智 :
拝読させていただきました。
絶賛以外に何も思いつかないんですが、困っています。
実体が無いようで実体がはっきりとあって、そこへと絡め取られていって、読後納得してしまう。
そんな今更なことを書くくらいしか思いつかない作品でした。
色々と今後の自作に活かせそうなものをいただきました。
かなり個人的に勉強になりました。
以上です。
失礼します。 ('07/03/03 16:17:03)
- 砂木 :
こんにちは 一条さん
私は 難しく書けないので恐縮ですが
読み始めから かっこいいなあと思いました。
勢いがあって 最後もかっこいいです。
ただ 妊娠した女の顔が汚れるというのは
ちょっと 気持が悪くなりましたが
それは 私が神経質だからなのかも。
気持が悪くなるから 書かないほうがいいとは
思っていませんが。
今も続いている戦争について 葬列の先頭はすでに
生まれ変わって 後ろを歩いているのかななどと思いました。
テロとか レジスタンスとか 遠い国の事のようでいて
夢にでてくる距離にある現実が 静観する火災報知機のような
言葉になるのかなと思いました。
新聞などで 少し見るニュースを もう少し詳しくみなければと
考えさせられました。こういう詩を書いてみたいです。 ('07/03/04 10:38:25)
- 丘 光平 :
心なしか、
一条さんの作品にしては、失速感を感じました。
「作品」としての完成度は文句なしです。
ただ、
逆説に聞こえるかもしれないけれど、
「作り」の臭いで損をしているのかなと思いました。 ('07/03/04 23:45:21)
- 新長老 :
はじめまして。
文学極道で絶賛されている、一条さんの一連の作品に、
どうにも馴染めなかったのです、が、これはいいな。
スロゥで始まり、転調したり、途中ぐだぐだになったり、そしてタメがあってのエンディング。
ココモ・アーノルドとは無関係なんだろうけど、
素人には感じ取れないような才気ほとばしる作品よりも、
こうした、わけわからんけど面白いものの方が、個人的には好きです。
周りでの評判も、概ね良好ですしね。
('07/03/05 00:50:14)
- 一条 :
ミドリさん
この作品は、かなりかっこつけた感があります。ま、普段、TAKA−Qで服を買ってるやつが ライトオンに乗り換えたくらいのしょっぼいアップグレードですが。詩を書くおっさんとしては、ライトオンを経て、これから、もっといいブランドに身を包みたい、そんな思いです。
宮下倉庫さん
そうですね、おもいきり即興なもんで、息切れというのは納得です。ぼくにしては、長いほうの作品に分類されると思います。でっかいのんとちっちゃいのんあたりは、それらを素材としては区別なく扱いたいというぼくの思いがあって(あるのか?)、息切れなく、違和感なく、一つの作品の中に閉じ込めることが出来たらいいんですが。
池中さん
大江光さんの音楽は、残念ながら聴いたことがないんですが、氏の親父さんの小説は大好物です。小説を書くなら、あんなのが書きたいなあと思っています。とりとめもないコトバがどんどんながれていく、っていうのは、ぼくの好きなパターンです。
平川さん
実体がないようで、実体がある、そういう世界観ってのは、作品の中では常に演出したいタイプではあります。この作品がうまくいってるかどうかはわかりませんが。
砂木さん
かっこいいですか。ま、最後は、ちょっとかっこつけた感がありますけど、全体的にはもっさりしたイメージの連続かなと、今、読み返すと思います。でも、やっぱり、確かにかっこつけすぎました。
丘さん
お、お久しぶりです。「作り」の臭い、いや、もう、ほんとによくわかります。これは、即興なんですが、即興慣れしてしまったんでしょうか。
新長老さん
「文学極道で絶賛されている、一条さん」、そうなんですよね。絶対、おかしいぞって思っています。ぼくは、残念ながら、詩人といえば、ネット詩人しかしらないんですが、うまくてすごい人はいくらでもいますよね。一条みたいなのが評価されるのかよ、ということで、文学極道に投稿を控えている優秀なネット詩人の人には、ぼくみたいなおっさんは無視して、どしどしここに投稿していただきたいです。 ('07/03/05 15:44:24 *1)
- 池中茉莉花 :
私も実は、とりとめもない言葉がながれていくのにも、あこがれがあるのです。自分にはできないことですが。 ('07/03/05 20:26:16)