詩投稿掲示板 - 過去ログ [43]

1303 : 引き潮のいるか  ケムリ '06/06/01 17:12:17

落ち窪んだあなたの眼窩に、ふた筋の光が集っていく
笑わないで夜の言葉、しろく佇んだままそこにいないで
オレンジの静寂、その隅っこを小さな虫が齧っている
海は潮を下げて、疲れた月が白んでいく

それは引き潮のいるか
波の合間に転げたままのひかり

メロウ、メロウ、メロウ、柔らかく霞んでいく
こっそりと掴んだつもりは、真っ白で乾いたゆびさき
全ての銀毛が空を見上げる
どこかの真ん中で くちびるは引き裂かれていく

それは引き潮のいるか
遠ざかって消えていく繋がり

取り残されていく夜の対岸で、星を繋ぐ人達が煙管を吹かしている
眠らないで、海を渡るかもめ
揺り貫いていて、心臓を腐らせたまま
乾いていかないで、匂いのあるままでいて

それは引き潮のいるか
どこかの真ん中へ引き絞られたさよなら

ノーホエアの疑いが、限りない世界を分かち合っていく
内心など問わないで、それは存在しないままでいて
つがいの鼠がアスファルトの中で固まっているのは
全てのネストが暖かであるため

ねじれた尾びれに瑪瑙の槍を突き刺して
幼い蛮勇を翳したまま 引き潮のいるかを追っていく

齧りとった口に、匂いの無い骨が残って
それでも角が無くなるまで舌先で転がした
もう腐るまで波打ちぎわに埋めておいて
柔らかな砂をまとった、ずっと濡れたままのくちびる

ノーホエアの音韻をつがえて
海に出るときはいつも希望しか有り得ない

引き潮のいるか、笑わないで夜の言葉
しろく佇んだままずっとそこにいて
唾液の匂いさえ消えていく繋がり
どこでもないどこかの真ん中へ


- ealis -