◇ No.43 , '06/07/01 13:14:18 作成

1281 : 今朝、影になる。  葛西佑也 '06/05/23 09:19:01

ぼくは生れた時から、
夜にまぎれる術、を、
知っているの。
多くの人たちが、
何事もなかったかの
ように、通り過ぎて
行く。夜道を、
たった一人で歩いて
行けるの。

たくさんの恋人たちが
死んでいったの、夜道。

ずっと、あこがれて
いた。マンホールの下
世界。
今、
太陽があるのか ないのか
も、わからず 
怯えているわ。
そう、影がないの。

気がつけば
一人になっている、ぼく
は。
マンホールから、
あふれ出しそうな
かわいた吐息に、
つつまれながら、
いくつも乗り越えて
きたの。
妊婦のおなか。

そう、そうなの。
夜道に転がっていた。
いくつもの、それ。
ぼくが、影だったころ、
その中の一つから、
産声をあげたの。
ぼく。

気がつけ、ば。
外は 朝で、
ぼくは道の上、
影になっていた
の。


1297 : 水の旅  ためいき '06/05/29 21:48:27  [Mail] [URL]

水で作られた駅から
街の下層に眠るもうひとつの街へ
幾つかの顔が消えていった

そのひとつが見上げた空
青黒い雲の層の上に
放射状に光の線が広がる
夏の終わりだった

交差点の
古いハイヤーの社屋にだけ
雨が降り続いている
「雨竜」という地名にふさわしく?
ひとつの顔が首を横に振る

顔のただれた娘を抱いて
「新十津川」の漢方の治療院へ
ひとりの母親が、
そこでハイヤーに乗った
雨の声に追われるように

寄り添うように流れる
雨竜川は
水の列車
交差できなかった
時を遡るように
窓に浮かぶひとつの顔は
思い乱れるようにうつむいていた
秋の空の高さを抱いて
雨の声に声を重ねて


1300 : 設計:世界の終わる日に唄う歌  6咲き '06/06/01 04:07:23  [Mail]

   1番歌
パr櫛・錯視ill・sa沙羅-双樹?)、楠ノ木々,nガ!
(イップ、射x一譜!午前の蝶r々・触覚ニィ、朗々ロウw!)

胎動ノ街、揚々とls凍てルル3時ha.Nmノ流布すギジ 円TAIYOO
Niくすホイー流々と視テ,℃な積み木-ルヴィ紀す-織ルffへ、薄スedノ
賛句シタシ!naヴィジョne羽の兎―マス、新規のo花畑eツッヴァ
レターmを孵スL 得タノールenな仔ラール、合唱・死マス合併は,ア
?Ar、と弧をホウル!密造主sいil,シタ輪、片割れno.十姉妹ノ血ィク
Sandニ雨ィカ、(鴉ヲ)食ラフtォ?n記号ハウ★キルケよ語ヲ売れ-ナ-a
唐紅―ヴ.ヴルr..サン句!慕いシ鳥棄tenn、三日ノ月と自然ノ-1000/t
刳るス・クル巣な大x王ik雲ノ腐敗に因ruru,雨ジスト色nyの打弦ン
アー、シ繰るシ!なte..t.n南天手繰る楠ノ木々,n ロウrプ!

パr櫛・錯視ill・sa沙羅-双樹?)、楠ノ木々,nガ!
(イップ、射x一譜!午前の蝶r々・触覚ニィ、朗々ロウw!
 ル.ru!楠ノ木々,nガ!紅iロve・紅色ノ蝶r覚ニィ!)

   2番歌
トロン・虎ン,pp!rウ期の陶磁器,ng、ダム・惰夢!
(仔ロン・雨ィカ、燦然シた!トロン 虎ン,pp-r、気化!)

ラ.ヴァース-bone-アダ夢のH音イル.ルな砂論ed(円Sui)raト
藍on斜交いノオーロ等,ink、ルルノ音℃ニ降ルート雫雨ィカ
E、幾何ノデン泥ビュー.mu-シ)無花果 茎ッかラノ騎乗no.机上
Ring-O,ダムの駅長ノA氏.スター.r韻スlto,燐寸のflo輪er円
繰るパラフィンed-炎柱-リッヒ兎リップ時計ii..虹ルUr、蘭グ
ar坩堝ノ海馬.ロン、煮ル.フェンすノパ炉ール,ルて燦然℃:Op
神学少um..女-火ーネーション.戯レ緯度-mini音-ruル炎上ノ
昨夏ロンの渡ス-彩度ノ-tone、死スターno.飽和.ル-糸ノシャ羽ァ
ケル,ト,ランプ草送ィッチ.黒★山羊(ya,マントラah)、断頭ノT
バ.aル仔ニィ..is.isな城イシャツ、暴-ル.動ノ,オト後遺iレッド
華オティッ区ナ-if)でno-ネーブル,十句架ケルとOnナ歌ノ噴Sui
彼方as焦r土・ショー徒!ノ.t、ノート上,veの戦火で孵す.rute
天蓋colorノ蒼褪メタ馬-ヴェラス製ピス兎ル.ル一声!蝶罰帽を!

トロン・虎ン,pp!rウ期の陶磁器,ng、ダム・惰夢!
(仔ロン・雨ィカ、燦然シた!トロン 虎ン,pp-r、気化!
 虎ン,pp!rウ期ノ仔ロン、雨ィカ・ウィ華!)


1285 : No Title  浅井康浩 '06/05/24 00:11:11  [Mail]

やさしさを帯びてはあふれだす蜜という蜜のただよいのなかで交わされていった
質感としてではなく透過性そのもののやわらかさとなったあなたへの糸状の思い巡らしの
その内実へと、ありったけのファムな香りを含ませておけ
                       眠らないことでつぐなおうとする夜に
              あなたの呼気につつまれて、うっすらとあおくなりながら
           わたしはわたしの呼吸をあふれさせてゆくことになるのでしょう



青に満たされた空間にあって
蜜の蕊を震わせて、しかしまだ響きだけがかすかにきこえていることの
その不思議さになじみはじめるわたくしがいて
あるときは音のぬくもりなんかに抱かれて
甘ったるい体温へかたむいてゆくことの不思議さをゆるすわたくしがいる



いつかの気象図面がここいらの時間軸との交わりによって
いらいらと泡立ってゆくのが見えるよ
ここの地形図の一点からの風景は
平面としての図の想像を越えた高低の差でいっぱい
いつかのヘクトパスカルも
ここでは質量を四方にはりめぐらせたラウンドスケープそのものとなって
生成してしまうのだから
ときに土砂となり
ときに果樹園の果実となって
みずからが高低の差として現されるべき斜面をころがりおちたりもするのでしょう



また、ほつれることではじまってゆく変化をおもえば
最後に、濡れ尽くしたものたちへ、もうなにものでさえ
濡らすことのなくなってしまった水そのものたちへと
いまひとたびのささやかな感謝を。



どうしたって きみの眼と蜜とあおさに浸されてしまう
きみだったなら「海洋」なんてそっけないひとことで言い表してしまうはずの領域で
明るさやその翳りをもなくして
けれど色彩を忘れ去ってしまったものたちだけがみたすことのできる透きとおった哀しみだけが
かつて世界が青色だったころのなごりのように 遠くへ


1262 : モモンガの帰郷のために  りす '06/05/16 02:49:53

モモンガが森に帰る朝
謝るとは何を捨てることなのか
すまない。
わたしはモモンガにそう言ったのかもしれない
なぜ、謝る?
家内が君のことをずっとムササビと呼んで、
いいんだ、慣れてる


レガシーのサイドミラーに自分を映し
女生徒のように丹念に毛づくろいしている
長旅になるのだろう
モモンガは鏡が好きだ
モモンガは断言する
これが人間から学んだ唯一のことだ、と


餞別のつもりで
三日分のバナナチップスを渡そうとした
モモンガは現地調達で行くから心配するなと呟き
振り向きもせず毛並みを整える
長い距離を飛ぶのは久しぶりなんだ
そう言って薄い飛膜を朝陽に透かす
きれいだな、とわたしは言ったが
モモンガは相変わらず
きれい という言葉を理解しない
わたしは 現地 とはどこだろうと
気になったが尋ねなかった


たとえば、とモモンガは言う
例えば、あの人はムササビをなんて呼ぶと思う?
ムササビはムササビと呼ぶだろう
そこには モモンガ が抜け落ちている
まちがい、ではないんだ
ただ 抜け落ちているだけだ
あの人を責めてはいけない


コンクリートジャングル という言葉を
わたしは初めて理解した
電柱を飛び移るという行為を
わたしは想像したことがなかった
想像する前に実行する生き物もある

電柱を飛び移るとは
繁った枝に飛び移るような
曖昧な着地を許さない
モモンガはここ数ヶ月 猛練習をしていた
モモンガの目撃情報が
朝日新聞の夕刊にのったのはその頃だ
「大都会でたくましく生きるモモンガ君」
そんな見出しだった
「君」をつければ誰でも仲間になるのかい?
モモンガは皮肉も上手かった


飛ぶことよりも着地が難しいんだ、モモンガは言う
友人のANAのパイロットも同じことを言っていた
教訓のような 常識のような
モモンガの言葉は いつもそんな印象だ


妻がパジャマのまま庭に出てきて
あら、どっか行くの? と尋ねる
モモンガに言ったのか わたしに言ったのか
判然としないうちに
どっか行くなら、ついでに燃えないゴミ出してきて、と言う
妻が差し出す半透明ゴミ袋に わたしが手をかけると
いいよ、俺が持っていくから、とモモンガが奪いとる
すまない、わたしはまた謝る
いいんだ、慣れてる

モモンガはひょいと物干し竿に飛びのると
手足を伸ばし 飛膜をいっぱいに広げ
一番近い電柱に飛び移る
ムササビってお利口さんね、と妻が微笑む
そうだな、わたしは相槌を打つ
ゴミ袋をぶら下げて 
モモンガが電柱から電柱へと遠ざかる
せめて ゴミ袋ではなく バナナチップスを
持たせてあげたかった
いつも何か抜け落ちている
謝るとは何を捨てることなのか
すまない、モモンガ。


1301 : 川遊び  sakutaro '06/06/01 15:05:56 *1  [Mail] [URL]

舟の上のかがり火、それに集まる魚たちを獲る
家庭を失った女たちは若い男を買う
恋愛は遊びにすぎず、皮膚だけの付き合い

夏の川の匂い、湿った風の匂い
家庭を失った男たちは若い女を買う
手切金も慰謝料も不要
恋愛は遊びにすぎず、皮膚だけの付き合い

殺人だの傷害だの、そういう類の事件は起ら無い
ゆっくりと腐敗して行く石榴のように
蛍のように、家庭を喪った男と女

知識は翌日にはもう古く、間違われた専門家は失業
一週間だけ動くロレックス、その夜だけの篝火
恋愛はただの誤解
結婚の前から家庭を失った男たちと女たちの漂流


1307 : 朝がくる  みつとみ '06/06/01 22:55:22

あさがくる。
わたしはかがんだ姿勢で、静かに息をのむ。

空からおとされた、その夢から覚めきらず、
湖の底から、
裂けた形をした空を見上げる。
藻にからまり、
わたしは力なく、湖面をあおぐ。
きょうまでは、まぶしい朝日がなかった。

水の底では、音もなく、声もなく、笑みもなく。
あるのは、わたしの呼吸のたびに、
生まれる小さな気泡。
わたしが生きている証に、
湖面に向けて、泡が浮上する。
きょうまでは、なつかしい声もなかった。

あさがきた。
わたしは目を開け、手で水をかき浮上する


1303 : 引き潮のいるか  ケムリ '06/06/01 17:12:17

落ち窪んだあなたの眼窩に、ふた筋の光が集っていく
笑わないで夜の言葉、しろく佇んだままそこにいないで
オレンジの静寂、その隅っこを小さな虫が齧っている
海は潮を下げて、疲れた月が白んでいく

それは引き潮のいるか
波の合間に転げたままのひかり

メロウ、メロウ、メロウ、柔らかく霞んでいく
こっそりと掴んだつもりは、真っ白で乾いたゆびさき
全ての銀毛が空を見上げる
どこかの真ん中で くちびるは引き裂かれていく

それは引き潮のいるか
遠ざかって消えていく繋がり

取り残されていく夜の対岸で、星を繋ぐ人達が煙管を吹かしている
眠らないで、海を渡るかもめ
揺り貫いていて、心臓を腐らせたまま
乾いていかないで、匂いのあるままでいて

それは引き潮のいるか
どこかの真ん中へ引き絞られたさよなら

ノーホエアの疑いが、限りない世界を分かち合っていく
内心など問わないで、それは存在しないままでいて
つがいの鼠がアスファルトの中で固まっているのは
全てのネストが暖かであるため

ねじれた尾びれに瑪瑙の槍を突き刺して
幼い蛮勇を翳したまま 引き潮のいるかを追っていく

齧りとった口に、匂いの無い骨が残って
それでも角が無くなるまで舌先で転がした
もう腐るまで波打ちぎわに埋めておいて
柔らかな砂をまとった、ずっと濡れたままのくちびる

ノーホエアの音韻をつがえて
海に出るときはいつも希望しか有り得ない

引き潮のいるか、笑わないで夜の言葉
しろく佇んだままずっとそこにいて
唾液の匂いさえ消えていく繋がり
どこでもないどこかの真ん中へ


1304 : 神よ・なにが・なぜ・脱皮させたもう  狩心 '06/06/01 18:43:51

「形あるもの全て壊れる」と嘆いた人々 遠い過去・風の如し
全ての生命と文化 データで保存 いつでも一瞬にして復元可能・神の如し
「〜してはいけない」と嘆いた人々 遠い過去・儚く愛しいものよ
破壊・消失 すぐに取り戻せるのだ 守るべき物は何もない 恐れることもない
規則は単なる知識となり 国家は解体される 徹底した個人主義よ 判断基準よ
客観的な良し悪しは工場で死に絶え 主観的な好き嫌いが血管を羽ばたく

英雄を必要としない流れ、主人公の不在、表現の多様化と細分化、自由を求める
支配からの解放、神からの自立、人類の性質を全て失う日を目的地として旅する
性質を失う事は種の絶滅を意味し、種の絶滅は進化を意味する
古代から仕組まれていた、ここはいつでも、未来型コミュニティ


1312 : 我蛾麗しきかな人生  南無 '06/06/02 20:54:59

ある哲学者が道をほっつき歩いていた。
 空ろな目で、燦々と輝く情熱の波間を漂い、また自分を取り戻さんが如く。

 哲学者の目の前を一匹の蛾がはためいた。

 哲学者はある晴れた夏の日に、蛾を指差しながら、「見て。ママ。蝶だよ!」と、はしゃぎながら言ったことを思い出す。ママは、「蛾は蝶じゃないのよ。蛾は汚いから、蝶ではないの。」と、言い放った。

 僕は、「蛾も蝶だよ。」と、言ってみたけど、ママは蛾を一瞥して、そそくさと歩いていった。

 蛾がなんだか哀れに思えた。こうして初夏の麗しき季節の中を弾むようにして花と花の間をはしゃぎつついったりきたりまるでその姿は蝶と
変らないのに、汚いといわれたそ羽は、趣味の悪い外国の絨毯の模様をしていた。

 僕は大きくなったらこんな模様のハンカチ(ネクタイでもいい)を持ち歩きたいと思った。なぜだか知らないけど。

 蛾は、僕の人生の心模様。
 例え汚くても、空は青く、花は甘い。
それを感受するものは、またそのように美しい生き物なのだということを
恐らく僕はあの日、ママに教わったのだと思う。

 ママは美人ではなかったけど、美しいものを慈しむ女性だった。
僕はそんなママの美への渇望の中、自然に美から排除された仲間達を慈しむようになった。
 そんな僕のことをママは悪趣味だと言い退けたけど、
僕は僕だ。どう言われようとおかまいなしさ。

 美の枠を超えた僕の恐ろしき仲間達よ。
 美しく咲き誇れ。
生命の哀しみを見せてやれ。


 世の人間どもに。


1274 : 喪失の慟哭   '06/05/19 10:11:41


     その悲しみは形容しがたく、胸の内を白くする。
     何もつかむことの出来ない寂寥の白色。
     初めて愛したあの人に、永遠に告げられぬこの思い。
     
     失った後に気付かされたのは
     愛されていた可能性。
     いまさらに感じる小さな喜び。
     運命は酷く、残酷だ。

     こんなにも早く逝ってしまうと
     そう知っていたならば
     迷うことなく告げていただろう
     道に外れたこの愛しさを。

     あなたの答えが知りたかった。
     それが出来ないのなら、そばにいて欲しかった。
     選択肢を切り落とされたら、僕は一体どうすればいい。

     うずくまる後悔に内側から引き裂かれて
     残された目立たない傷痕。
     そんなものでしかあなたを残すことが出来ないのか?
     それとも、時に癒されてしまうのか?
     僕はどちらも嫌だった。

     体温の高いあなたから
     人を信じる心と
     孤独を痛がる弱さを得た。
     引き換えに失った、見せ掛けの均衡。

     まだ、何も始まっていなかった僕たちの関係。
     
     胸の内の熱い白は
     やがてすべてを灰色へ。
     しかし決して黒に染まらず
     僕は闇にはとけられない。

     残された最初で最後の手紙
     追伸に隠されたあなたの思い。
     知っていたんだね、僕の気持ちを。
     あなたは受け入れてくれたのだろうか?
         
     知ることは叶わず、
     この慟哭もやまない。
     喪失の傷は拍動を続ける。
     悲しみは鳴り止まぬ雨音のように
     僕を包んでは沈ませる。
     


     生きている限り、続くであろう
     それは喪失の慟哭。

     終わることのない
     安寧の薄闇。


1313 : I  南無 '06/06/05 00:01:35

言葉を多用することそれ自体が、要らぬ誤解を招くもと。
わたしは裸の魂であなたの中の空洞を駆け抜ける。
やがてあなたの目の中に真実を見つけようとあなたを
見つめるけど、化けの皮が剥がれ落ちたとき、
あなたに美は残りますか?
裸の体温で、二人の現実が重なるとき、それが何億分の1の
確立でしか起こり得ない奇跡だとしても、わたしは見向きも
されずに終りますか?
 それならわたしは太陽として生まれ変わり、あなたの幾度もの
人生を照らし続けよう。見届けよう。
幾度もの終焉と再生を。
最後の最後はわたしの終わりであなたの終わりを包み込み、
宇宙の根源へと還っていこう。
 同じ宇宙でささやかに息をする。
ゆらりゆらりブランコは二人の間を行ったり来たり。
危険を侵してまであなたのもとへ行く勇気を
 わたしに与えてください。
神様。


1305 : 狂犬(´・ω・`)  文月悠光 '06/06/01 19:17:21  [Mail] [URL]

絵の具の刷毛が色水の中で揺れていて
私の手の中には美術室の陰影が
形づくられていた。
3分間のデッサンは薄暗く、
紙と消しゴムだけが白く浮かび上がり
ひょっこりひょっこり顔を出す。
私はその顔を刈り上げる。

ぎっこんばったん。限りないものを
デッサンの三。
この世界を紙に描き尽くして、
燃やし、煙らせたい。
白く巻き上げたものを
カセットテープで再生し、
私は独りまどろみを握る。
この一瞬(とき)を見逃さない。

翻ったカーテンの向こうに
洗剤で荒れた手のひらが浮かび上がる。
「困ったような顔をしないの」
と手に叩かれる。
ガサガサガサガっササッサッササッサササアサっサシす……
母の手はガサガサしている。

私は困ってなんかいなかった。
ただ死への水面(みなも)が一乱れもしなかったので
手を伸ばしていたいのだろう。
だから
手のひらが振り下ろされたとき、
私は身をすくめない。
鈍感な肉体からは
金属が硬化していく音がする。
劣化した何かが
カラカラ鳴っている。

コンパスがなくても円を描けます。
「やってみなさい」
と先生は言う。
私は水面(みなも)を縁取って先生に手渡した。
「ほう……困っているね」
私は首を振った。
飛び交う空気は鉛のにおいがする。
狂いたい。

私は四組の教室に飼われている犬だ。
吠えたことのない、
ものわかりのよすぎた狂犬だ。


1316 : キミとボクの甘露瓶  Tora '06/06/05 10:08:26

キミには赤が良く似合うと
唇を噛み千切って赤く染めた
口の中でコロコロとはしゃぐキミをよく溶かし
溢れる甘露を瓶に詰める

俺はキミの全ての穴に浸かり効能を確かめる
お湯加減はどうですか キリストが見えるよ

俺の懐には露出した精気の残照甘露瓶
中身はもう空っぽなんです
昔も今も変わらないんだよ
キミのおへそに頬擦りするんです
逝きたいだけじゃないんだよ
クリンと裏返りキミの中へ溶け込むんです

そこはきっと雑音のない政界なんだよ
「ただキミにぶちこみたいだけだったという発言につきまして大変遺憾に思います」
不能な総理が増殖するんです

そして俺は深夜に
口の中でコロコロとはしゃぐキミをよく溶かし
白い甘露を瓶に詰めて
街頭で一瓶300円で売るんだよ
赤がよく似合うんです と


1314 : 鳥獣保護区  冨樫英二 '06/06/05 00:02:14 *2

電信柱の連なりからこぼれ落ちた霧が
細かな電光をまとって
擦れ合うと色の破片となり
わたしの掌の中で冷め
苦いガラスの味があたりに広がった

夜明け前の空に粗く吹き込んでいる
樹木のざらざらした骨を舐めている
わたしたちは出会う
わたしたちには風景が見えている
その時、手に従って流れを掬い
空中の中で それらを
結びつけることが可能だ
わたしたちは淵に立ち尽くしている

あなたは何もかも刻みこむことはやめて
「せせらぎ」に含まれている音を
ただ、支えようとしている
そして
わたしが背景に退いた後も
モノの実線に向かう「そよぎ」はやさしく
それらは、
あなたの指先が何もかもペリッとむしり取ってしまうまで
わたしたちが擦れ違う瞬間に組み込まれ
触れられるのを待っている

今朝、
ホームへと降りると無数の鳥の目がしばたいた
手をかざすこともできず
何もかも分け与えてしまうとわたしは振り返った
何もかもよく見えなかったが
車内には「おしゃべり」の音が聞こえ
窓がぱたぱたと風に叩かれていた
やがて わたしは
モノへと向かう速度を飛んでいる鳥につかみかかったが
わたしは 即座にはたき落とされてしまった

根源的な恐怖がするすると胸の中で伸びる
そして高く 
跳び出す
鳥が
右から左へと鋭いまなざしを向けながら飛ぶ
剥き出しの樹木が宙を絡め取る
宙を切り取った線を跳ぶ


(鳥につかまれている・・)


我を取りもどすと
わたしの 肺には
パリパリの紙くずがむっとするほど噴き出してきて
口を抑えるとあたりでは
クスクス 内部で 「のチ ポをおねだ りし
発射をう けるニスがっぽ
&&
射♪」

「マ・ナー」  すが たしに は見えなかった――

「対応いたしますのでよろしくお願いします。」
「対応いたしますのでよろしくお願いします。」

     、 は  た   しは手をかざした――


その鳥はすでに速度の中で死んでいた
出来ません。出来ません。
ケッ!クッ!「クックル」ー!
わたしには見えるのか?

鳥は格子の隙間から牢に舞い降りる
虚脱したカーテンレースが空中に呑み込まれる
洗い流す
木目がするするとカーテンにほどける
鳴き声を聞き取る

「ああ うつくしい!」

「のさぁ
わたしが周りに合わせて自分の着る物を選んでるって
いつか
きみが注意してくれたことがあったよね
今思うとさぁ
その時のわたしってのはやっぱ
人間は世界の中で
かなりちっぽけな存在だってことを
よく知ってたんだと思うんだ」

衣装がこんなにも無いのか?

女の子が二千人以上!
わたしは生きているのか?
満足を拡大しようとする男たちがまだ寝ずの番をしている
映像を見ながらチャットはもちろんのこと、
それらが 細部まで描写されつくしている
皆が
「食いしたい・・・」と願う

「暴力追放」を銘打った旗が駅前の広場ではためいていた
それがこの街のスローガンなのだ
わたしたちはその前を毎朝通り過ぎていく
会社員が通り過ぎていく こどもたちが通り過ぎていく
もっとさまざまな人々が 通り過ぎていく
わたしたちが 追放し追放されて
街の中へと
追い出されていくのだ
だからカラダ
こんなにもうつくしくなっちゃって
無意味みたいだ


1317 : 海底  だいすけ '06/06/05 11:10:31



つめたい海水の夏

入り江の海底で

俺は座って見あげる

漂う乳房とワンピース


夜にはずいぶんと

おだやかな波になり

雨で濁っていた潮も

昼には透き通った


陽光が差して

貴方はゆらり

天井に寝そべっている


1309 : 逆行  島 明 '06/06/02 01:20:34  [Mail]

早朝の駅前の雑踏
波のように押し寄せる
会社勤めの人々
私は人々の顔を見る
皆 今日の仕事を考えている
私はそれに憔悴する
流れの波に足が動かず止まる
むしろ後ずさりする
何故 私ひとりが人々の波に
逆行しているんだ

夜と朝の狭間で生きている
夜と朝の狭間で身動き出来ない
頭の中の問いかけに
今も答えは分からない


1306 : 心の庭  ミドリ '06/06/01 21:42:23



街を見下ろせる ガラス越しの喫茶店で
小さな椅子に腰をかけ
ふたりはよくそこで コーヒーを飲んでから仕事へいく
まだあどけない少女だった頃から
彼女を僕は知っていて

なんの変哲もない会話の中に
ふたりだけの小さな
緑に満ちた楽園があり
なにかしたことで笑いあったり
ちょっとした仕草を触れ合わすだけで
心のヒールに届くような
感情が生まれてくる

その滾々と湧き出る泉の中で
ふたりはコーヒーカップと 言葉のつぶてで過ごし
「時間だね」
そう言って 腕時計と互いの目を見つめ合わせて
店の扉を後にする

彼女が結婚したのは僕の知らない男で
とても背の高い
陽に焼けた青年だった

知らせをもらったとき
ふたりだけのあの小さな庭はもう
この世には存在しないのだと僕は悟り
でもそれは とても綺麗な顔をもった
世界から配達された手紙のような気がして

鉄の錠前のしっかり掛かったあの小さな庭を
僕は胸の中に閉じ込める 
きっとどこかしらに いつもそんな場所がたくさんあり
必ず交代で人たちは其処へやってくるのだろう

ビルとビルの隙間に
霞んで埋もれそうになっていても
人はそこに足を踏み入れずにはいられない
そんなポケットの深いところにぎゅっと心を突っ込んで

今日も雑踏の中の見知らぬ顔たちの
肩の間をすり抜けながら
人は道すがら帰るべきその庭へと 靴底を踏みしめていく


1299 : タケノコ  紀取 '06/06/01 00:13:43

あの芸術家が絶望したとうそぶく その隣で

メキメキ伸びろ タケノコ伸びろ
伸びろ 伸びろ さっさと伸びろ

野心を抱いたあの人が走ろうとする その傍らで

タケノコ伸びろ 伸びて伸びて 竹になれ

千路の悲鳴なぞ 肥やしにすら ならないさ
かの論文発表も 売れた詩集も 

伸びろ伸びろ 宇宙から独立した形で伸びろ
よしなしごとは 何もかも知らぬと言え

私はただ伸びると主張しろ

伸びろ伸びろ タケノコ伸びろ

食われる前に伸びろ


1311 : 冬の夜、僕は悲しくて  ロン毛パーマ '06/06/02 18:52:42

冬の夜、僕は悲しくて、
ひとり、港の桟橋で、
黒く、ゆらゆら揺れている海と、
そこに写った月の姿を眺めていた。

海上を漂い流れている
つるんとした
大きな物体が、あった。

月明かりに照らされた
その物体は、
仰向けに漂う全裸の中年男性、
僕の高校時代の恩師。
十年ぶりの
再会だった。

海上を漂う一糸纏わぬ五十男は、
見下ろす僕の、顔を見つめて、こう言った。
「勉強は、しよるのか?」
僕は何も言わなかった。

僕が泣いていることに気付いた先生は、
静かに僕にこう言った。
「園芸部に入らんか?」
僕は涙を拭いた。

少し波が強くなって、
先生は何度も桟橋の岸に体を強く打ち付けて、
その度に、上を向いたり、下を向いたりした。
上を向いたり、下を向いたりしながら、
てらてらと濡れ、輝く、その顔は、
笑っているのか、泣いているのか、
僕には分からなかった。
僕はタバコに火をつけた。
足下で先生が、
「こら、お前、タバコ!」
と言った。

僕は夜空を見上げて、
思いっきりタバコの煙を吸い込んだ。
そして、
それぞれの事情を想った。

「ごめんね」と言って、
電車の中に消えた彼女の事情、
その時僕らの横を通りすぎて行った
汚い身なりのおじさんの事情、
あの時、あの場所にいた何百人もの人間
それぞれの事情、
そして、
僕の足下をゆらゆら漂っている、
つるんとした大きな物体、
その、事情。

夜明けまで、そこにいても良かった。
けれどそうはしなかった。
一応、まだ僕にも、やるべきことが残されている。
そう思う事にした。少なくとも
部屋に溜まったゴミを出さなきゃならない。

僕は再び海を見た。
先生は少し沖の方に流されていた。
たくさんの小さな魚たちが、
先生の体毛をついばんでいた。
黒く光る海を漂いながら先生は
なにか鼻歌を唄っていた。
どこかで聞き覚えのある歌だった。

僕は家に帰り、
散らかったゴミをまとめて玄関に置いた。
明日の朝九時までに出さなきゃならない。

明け方、僕はベッドに入った。
ほんの数回、このベッドで彼女と
体を暖めあったこと、思い出していた。
そして、眠った。
眠る直前、先生の歌っていた鼻歌が
母校の校歌だったことを思い出して、
少し、むかついた。


- ealis -