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12245 : 歩く  深尾貞一郎 '20/12/03 11:37:07 *1

輪郭線のない肺がずっとある
ちか ちか ひかる
雨だれのそばまで
歩いていく

しめやかに消し去られ 燃えつきた時間と
皮膚との隙間でふるえている透明な呼吸
あたりの空気を食べるように
不織布のマスクから口をだす
照明のまばらな社内
PCの画面には実体なき蝶の翅が映る
羊歯の茂る森では 人は自然の一部であるという

手のひらで弾ける
首すじをつたう 水
エタノールのしろい吐息のよう
(病の言葉は反復され
当然のように白昼に充満している)

テレワークがあたりまえになったこの頃
静かに浅い眠気が日に何度かおとずれる
通勤のときの道草
色づいたケヤキの巨木にふれてみた
堂々としたそのたたずまいに身を正した
腕時計を見る

目覚めよ
階段をくだり 廊下を進む
靴音は雨だれの響き
総務課で郵便物を受け取ったら
小声であいさつをすませた
進め
ありふれた日に書類の束を仕上げていく
新しい熱病も 希薄な酸素も超えていく

真摯な思考は宙をただよう鏡
彼方の青い花園まで歩く
キーボードを操作するわたしと
別の意志を持っているかのように 
しなやかな指先は森のなかで蝶のゆくえを追う

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20201203_837_12245p

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