朝
ベッドを降りて すぐ窓辺に向かうのは ごく自然なあなたの
習わし 目覚めるまぎわの 夢の中で負った新鮮な傷口が春を
染めあげ 「生まれたばかりの幼い蜥蜴に会いたく」は 行く
春の謂われとしては 姑息なもの言い 庭に一輪 咲き初めた
白薔薇に 「おまえを切る」と鋏を入れ グラスに挿したテー
ブルに頬杖ついて見つめていても しょせんは成就しない美と
いうもの 紅茶は冷えていたずらに紅い
昼
河口と雲だけが輝き 突堤の先端では 日傘を傾けるあなたも
あなたが連れたトイプードルも 記憶のように瞬きながら翳る
毛細管が急速に繁茂していく青空 やがて暗黒へとゆらいでい
く青空 水平線が飛沫をあげて垂直に立ち上がり 目盛られる
来し方100年 さらに100年 「戦争は宴だった?」 初夏を思わ
す太陽の下で あなたは質素だった食卓のことばかり思い出す
そこに居たはずの わずかな係累のことも
夕
あなたにとって星は 呼びかけうる最も近しい隣人 窓が閉じ
られカーテンがひかれ そそくさと踵を返すキッチンでは 一
枚の肉が夕焼けのように焼けていく 皿を並べたテーブルの上
では 白薔薇の首が刻々死へと落ちていく 肉の油で汚れた唇
をぬぐい 膝に前肢を掛ける三毛をたしなめ なにより無事を
尊ぶあなたの生活 きょう一日のことを 「あれ?」と こと
もなげに忘れてしまえば 忘れたことはあしたまで見る夢の糧
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140421_550_7407p
- 破片 :
若返りきれてないのでは。
一連ごと、そして作品を通して、始まりから終わりにかけて山を少し登っていって始点と同じ高さに終点がある。みたいな感じですかね。それは安定していてそこを評価する方も沢山いらっしゃると思います。俺自身にも、これはやっぱり上手い作品だ、っていうのがまずあります。
若返りきれていない、っていうのは文体と語彙と(って言うんですかね)がちぐはぐな印象を受けたからです。
意味内容よりも静かに雰囲気と余韻を残して行こうとする渋く固い(硬い、じゃありません)文章の骨組みに、瑞々しく跳ね回ろうとしてる筋肉がくっついてるような、そんな印象でした。華やか、っていうとなんか違うけど、目立つ語句の、唐突さを上手い事誤魔化されてるんじゃね、っていう不快感と、だから空白使ってんのかなとか、じゃあ上手いってことでしょみたいな。句点を打っていい部分、読点を打っていい部分、それら全てにスペースが代用、挿入されることで寧ろ接続していくような、そんな感覚。認めたくありませんが。
「一日」だっていう提示がまず為されていることで俺は安心しました。この作品には限界がある。枠が設けられそこに嵌められている。「夕」の連の終わり方はとても静かでごくありふれていて、そんな終わり方をきちんと上手く落とせる技術を羨ましいと思います。しかしそれまでです。細部まで読み込むほどに徐々に縮小していく感動や衝撃を見つけることが出来ても、ぱっと一読して人をぶん殴れるような作品にはならないような気がして、俺にはそれが、失礼ですがホッとしました。 ('14/04/30 01:39:10 *1)
- 鈴屋 :
返信遅れて申し訳ありません。
無理に若返りをはかろうとは考えてません。ただ私の詩は昭和へのノスタルジーとか古色蒼然とかよく言われてきたという事情がありまして、言い回しとか語彙には多少気を付けています。たとえばこの詩、紅茶をお茶、ベッドを布団、キッチンを台所、トイプードルをスピッツ、テーブルをお膳なんかに替えると古びてきますね。古色蒼然も嫌いじゃないので、詩のシチュエーションよって使い分けているということですかね。
叙述の方法についての破片さんの丁寧な意見、よく納得できます。とくに異論はありません。で、自分でもどういうことなのか考えてみました。一見散文風だけど散文じゃない。つまり行わけ詩に即座に変換できる書き方。ではなぜ行わけにしなかったのかというと、語彙が持つ強弱を均す、あるいはまぎらわすことができる。句点、読点を使わないのは、見た目のすっきり感と、この一字分の空白が接続詞のかわりをはたしたり、散文としての意味を省略したりしているのではないか、あとリズム感、つまり便利なんですよ。おおざっぱですけどこんなことを考えました。破片さんの考えと重なるところばかりですが。
この詩の終わり方について、批判と言ってもよろしいかと思われる意見がありました。言われるだろうなとは予想していました。ひとつわたしの方から反論めいたものを返させてもらえば、昨日、今日、明日という日常の無事をひとつひとつ噛みしめながら暮らしていくということ、これはとりもなおさず、暮らしの中に潜むひりひりするような危うさを自覚していることだとおもいます。「詩」の問題じゃないじゃないか、と言われればそれはそのとおりだし、論旨がずれているかも。いずれにしても、詩なぞ書いていられるのはだれでも日々安穏な証拠です。 ('14/05/01 22:56:18 *2)
- 砂木 :
こんばんは 鈴屋さん
夢の中で負った新鮮な傷口
私は単純なものでここで あれっ?て感じでひきこまれました。
白い薔薇と紅い紅茶。ロマンチックといいますか 乙女?。
しかも咲き初めた白薔薇。咲き始めたではなく 初めた。潤います。
春に咲けないあなたが見るものはすべて夢の糧 夢切る夢。
本当にうっとりと浸りたいのですけれど なぜ夜じゃなく夕
なのかなとか 戦争? わずかな係累? とか ひっかかってしまい
紅茶は冷えていたずらに紅い という所で冷めた自分の血を思うような
思わせぶりな雰囲気が 二連で 誰?みたいな別の人みたいな違う雰囲気。
それで私自身 同一人物を書いているのかそうではないのかわからなくなり
もしかしたら同一人物でも若い時からそれなりの時まで年代別かなとか
幾たびの春の一日を過ごしてきたのかわからないし 春の時々の
断片なのかな つないでいるのは白い薔薇みたいだけれども
わずかな係累 というのも白薔薇のことかなとか迷い。
あなたって白薔薇?。なによりも無事を尊ぶあなたが 咲き初めた
白薔薇を切り 美のため殺すのは残酷だなあと思います。
騙されたかったなあ 一連だけなら騙されたのにと思います。。 ('14/05/11 20:15:17)
- すずらん :
おはようございます。
「朝」の期待は平和的に裏切られ収束する1日。
「あなた」は貴女/貴男ではなく彼方だったのかな。
筆さばきがうまい方だなぁ、とは思いましたが
作者の力が無駄遣いされているとも感じました。
この作品のあとくちは「紅茶は冷えていたずらに紅い」でした。 ('14/05/12 09:13:37)
- 鈴屋 :
砂木さん、すずらんさん、こんばんは。
砂木さん。
最初に、わたしの詩とはあまり関係ないことから言ってみます。
砂木さんからはよくわたしの詩にレスを貰いますが、いつも不思議に思うことがあります。それは砂木さんの性別が判然としないということでした。この感受性は女性だとか、いや星菫派の優しい男の子かもしれないとか、どこかのレスで「ぼく」を使っていなかったか?とかコメントを貰うたびに考えるのです。その上わたしはたいへん失礼なことではありますが砂木さんの詩を一遍も読んでいなかったし、そもそもこの文極には評をつけるだけで詩の投稿はしていないものとばかり思っていました(あるいは忘れていたか)。そこで今夜は酒も醒めかげん、もてあます時間もあるということで調べてみました。びっくりしましたね。文極ではわたしよりも古くから作品を投稿していたんですね。かれこれ十年近く。幸い小品が多いのと、寡作であるということでわけなく全ての詩に目を通すことが出来ました。とても楽しめました。で、判明しました。女性でした。とはいっても、わたしは砂木さんの詩にもレスにも中性的なものを感じるのですが。
ながながと失礼しました。では本題を。「あなた」像についての砂木さんの怪訝はもっともなことだとおもいます。わたしも書いている最中どうしたものかと思案はしていたのです。でも、このように書いてしまったのでこれで通すことに決めました。返答になっていませんね。
砂木さんは詩の中で使われる語彙、小道具について、作者の思惑の及ばなかった意味づけをしてくれることが多々あります。これ、楽しい。とは言ってもこのことはわたしの詩についてよく言われることですが、「とっ散らかっている」ことの証左かも知れません。破片さんにも近いことを言われているし。
「騙されたかったなあ」とありますが、そのうち騙してあげたいですね。
すずらんさん。
この詩の最も熱心な読者は私です。作りながら何回も読むので当たり前と言えば当たり前ではあります。その結果、もはやうんざりとなっていまして、つまり叙述が鼻につくということですかね。このへんの事情をすずらんさんは「無駄遣い」というふうにやさしく言ってくれたのでしょう。
「紅茶は冷えていたずらに紅い」を引用して、批判に代えるとはなかなか気がきいています。ありがとう。 ('14/05/13 21:31:50 *1)
- 砂木 :
こんにちは 鈴屋さん
詩を読んでいただきありがとうございます。
あっと驚く奇跡といった感じです。
性別に関しましては諦めました。
ただ私は名前は砂木しか使っていません。
それは一応明記しておきますね。たまに誤解されます。
性別と同じで信じて貰うのは難しいですが 他人にも悪いし。
一連の夢感が 二連ではぐらかされたような感じで
つい好き放題な事を言ってしまいましたが 春の修羅感は
三連まであっての事かなあと思います。
詩は現代詩フォーラムという所に置かせて頂いてます。
鈴屋さんにお薦めできる自分の詩がないのが残念です。
では わかってても騙される詩 楽しみにお待ちしています。 ('14/05/17 14:55:41)