文学極道 blog

文学極道の発起人・スタッフによるブログ

2009年1月選考雑感

2009-03-02 (月) 14:20 by a-hirakawa

今月も勉強になりました。
ありがとうございます。

選考の際、印象的な意見がありましたので、ここに特記させてください。

・冒頭を大事にしていない作品が多い。インパクトという意味ではなく、詩の入り口で魅力ある香りをただよわせようと意識しているだろう作品がほとんど無かったように思う。詩は全体だというのはもちろんだが、それでも玄関は大事。もっと読む者を惹きつける言葉の力が欲しい。

・熟語の多用により、詩の言葉が説明に成り下がっている作品が少なくなかった。言葉で綴る限り、詩の魅力は内実だけでは足りない。これは本当に声を大にして言いたい、便利なものに安易に、もしくは無意識に頼りすぎるなと言いたい。

文学極道は誰でも作品を投稿することが出来ます。投稿することは推敲前に反応を見るための手段に過ぎないという方もいらっしゃるかもしれません。ただし、忘れないようにしないといけません。推敲していき段階を経て最終的に作品として立脚するとしても、発表した時点でそれは取り返しのつかない現代詩です。
合評の前に今一度の覚悟を作品に作者に負わせてみましょう。自戒も含め記しておきます。
(もちろん気楽に大傑作を書いて気負いなく発表しても構わないと思います。また、ネットだからといって最先鋭である必要はありません。媒体の可能性を広義的に解釈して何でもありで臨んでも良いのかな、と感じています。)

さて、今月は、

3291 : 給水塔の上で  鈴屋 ('09/01/27 00:15:33)

3246 : 夏の隙間で  草笛 ('09/01/07 23:38:08) 

3245 : ホーキンスさん  一条 ('09/01/07 19:26:52 *1)

3240 : まるで魚のように(PCで見てください。)  水瀬史樹 ('09/01/05 18:22:30) 

以上、四作品が月間優良作品に選出されました。

3291 : 給水塔の上で  鈴屋 ('09/01/27 00:15:33)
作者の意識の働き方は戦後すぐの現代詩から変わらない部位もあるように感じられますが、それを時代の中にある自己へと調弦している確かさへ結び、つながる作品の魅力は流動的に濾過され加味されているように思えます。不安の表層として死せる生として女を燃やしている、この超現実の完全なる内外界は塩梅が良く、昇華されていて、読み手の意識を摘んでいるぎこちなさの巧さがある、という意見がありました。漫画では比喩的表現が進化し、「おやすみプンプン」などストーリーの新鮮さよりも魅せ方にこだわる作品が台頭してきたが、詩ではその方法はありふれている、その上で、筆の使い方、やり方、素材の活かし方が上手い、という意見もありました。着目はいいと思うが印象の先へ向かえているかというと今一歩なのではないか、という意見もありました。

3246 : 夏の隙間で  草笛 ('09/01/07 23:38:08) 
この作者の登場が今月の収穫かもしれない、という意見がありました。父のえくぼの引力が大きく働いています。甘い卵焼きは一方的な愛情でまちがった表現の仕方の表層でしょうか。拙いところがまた味わい深いです。事象と心象がうまく絡んでいて、このギコギコとした愛と、情と、他者との隙間にただよう闇、圧倒的な、わからなさともいうべきもの、余白ともいえるものがよい、という意見もありました。

3245 : ホーキンスさん  一条 ('09/01/07 19:26:52 *1)
は、さすが一条様式の妙は魅力的で有無を言わさず掴まれてしまう、という意見がありました。ただ推敲前の方がすきだった、という意見もありました。一条さんの作品を読むと、突き放しかたが痛快だなーといつもおもう、自身をも突き放してるんじゃないかと時々おもうほど、音読するとなぜか気持ちよかった、という意見もありました。

3240 : まるで魚のように(PCで見てください。)  水瀬史樹 ('09/01/05 18:22:30) 
核ではなくひろがりを味わうものとして、成功しているとおもう、という意見がありました。
少しありがちな作品形態であり、さらに、期待しないで読んでしまうだけの作品の見た目であり、ハードルを下げに下げて読ませて、少しの良さを大きい良質さへと転換していく不思議なヘタウマな作品だと思う、という意見もありました。このヘタウマさは貴重で、この枠組みの作品としては最も追究されている印象を持ちもし、
 なまあ さひに 
など、少し無理があるものの、
 なまあ  くびに  

 しろい  くびに  
などの語彙を変えているところが良質さをもたらしているのかもしれず、完璧に作られていないところが作品を高めたのではないか、という意見もありました。
偶然の産物かもしれないけれども貴重な作品だと思います。

さて、次点佳作作品について触れていこうと思います。

3287 : la respiration d'un dormeur 寝息  はなび ('09/01/26 06:06:06)
は、私は読める域に達しているだけでもラブポエムとして凄いのかもしれないと感じ、誰でも出来そうでなかなかできないことをやっているという理由から優良へと推したのですが、”できそうで、未だできてない”というくらいの完成度であり、ちょっと心許なさが作品の立脚を引っ張っているという理由から次点に留まりました。悪くない、草を食む牛の夢を見る男を「ゆめのないおとこ」とするあたり的確で面白い(作者のコメントを読むと“無邪気”という言葉が出てきたりして、作者の真意は感じた方向とは違うものかもしれない)、反芻ばかりする者の、後ろ向きなさま、「とりになったゆめをみてる/わたし」と、自分を鳥に見立てたところはいまいちイメージをとり難い、ただ、この詩のバランスだとそれ以上を書き増すと説明過多になってしまうだろうし、バランスとしては現状がギリギリの線かとも感じる、これは私見ですが、女性が自身に鳥をイメージするとき、男性のそれ(解放、孤高)と比べて滑稽度や醜さが増す傾向を感じることが多い、という意見もありました。もう一歩という気もする詩、ここから突き抜けるとなると台無しになってしまう気もする、漂っている単体です。

3249 : 冬の散歩道  ゆえづ ('09/01/12 01:02:22)
には、十代の通過儀礼というでもいうべきありふれたテーマだが言葉は作者のものにしっかりなっている、という意見がありました。2連1行目に違和感を感じた、「私達は十六」ではあまりに説明的、それを想像させるものを別の言葉運びで作中に溶け込ませたほうがよいのではないだろうか、という意見もありました。作者の詩人としての可能性と力量、萌芽が見事でありこれからの作品も楽しみになった、という意見もありました。

3263 : 今日、私の日本語から一切のかなしみがほろびる  祝祭 ('09/01/15 10:51:50) 
かなしみに対する祝祭さんのまなざしを買いたい、「もう言葉しかそこにない、という悲しみ」という視点、その消滅をさらに言語化するという試み。幾重もの層を見るようで興味深い、という意見がありました。なんだかんだで残る作品、雰囲気の異質さから来るものなのか、こびりつく点、粘着力には目を見張るものがある、という意見もありました。

3238 : 見出された室内  午睡機械 ('09/01/03 20:52:14) 
澄んでいる作為が前面にあり、意識を掴んでいきます。とても良質だが、作者の他作品を考えると習作感が強いのではないか、という意見がありました。

3268 : ミクララムラハウスのこと  はなび ('09/01/17 08:13:24)
単純に悪くない、作者の伸び方と共に馴染んでいる作品の伸びしろが残されている部分がまた良いのかもしれない、という意見がありました。面白いが、本人がつくりあげたい表現の過程というか、途上の作品であるように思え、実験的印象が勝る、という意見もありました。

3252 : 砂漠の魚影(或いは「父のこと」)  右肩良久 ('09/01/12 09:58:17)
作者は詩人ではないかもしれないが最後まで丁寧に書れている、
  二、人々が魚を食し、僕が魚を食する
は特に印象的だが、
  三、命題
でラインが落とされていることが残念、という意見がありました。

3285 : 罪滅ぼし  丸山雅史 ('09/01/24 03:24:05 *8)
作品内で自分を殺していき、救済していくことは自己肯定でもあり、それをダサく非常にダサく行えていることにより感情へと訴えるものが出てきていて、これは貴重なのではないか、という意見がありました。

3273 : 闇よ  小禽 ('09/01/19 16:35:26)
未だにこの形式の作品を書いている作者に拍手したい、新しさはかけっらも無いけれどその分真実はあるかもしれない、という意見がありました。小禽さんは過去3作とも短詩で文体もさほど変化がないが、どれも別人が書いたような印象だ、文面以上に深度を測りかねる位置で、もがいている、そんなことを感じる、この作品は佳作には届かないようにも思える、けれど、どう動いてくるか、あと10作くらいは作者として先行きを見続けてみたい、という意見もありました。

3269 : 幸子ちゃん  しょう子 ('09/01/17 17:10:29)
前を見て羽ばたこうとしている子どもの姿を書くには、歯車が回らない激するものをもう一点入れても良かったように感じる、これはこれで良い作品であり、書かないことでの哀切さがある、という意見がありました。(自閉症という)存在を最後の二連が綺麗にまとめ過ぎているように思える、けれどもそれでも良いのかもしれない、裾がある作品に感じる、という意見もありました。

3274 : 「またね」  ミドリ ('09/01/19 19:10:52)
旬が過ぎた後の上質さがあり、素直に良かった、という意見がありました。

3260 : ラオ君  一条 ('09/01/14 17:52:48 *2)
適当さのように感じられるものが悪くない方向に進んでいるのは不思議であり、作品として強い、という意見がありました。「空虚」の深度に違いはあれ、”ジャンル一条”は健在、という意見もありました。

3271 : A Daydream of Jumpin' Jack  午睡機械 ('09/01/19 13:05:38)
丁寧に紡がれている、あまり面白い内容ではないが、それはそれでまた別の話だ、という意見がありました。作品を作ることに苦悩することが前に出てしまう作者の作品よりも、詩が匂いたつ作者の作品に期待したい思いがある、という意見もありました。

3297 : クマのヘンドリックの「才能」  ミドリ ('09/01/29 23:49:44 *1)
差別の悲しさあり、下ネタあり、と、ミドリさんの作品はBL系の上質な作品の作りと通じるものがあるような気がする、という意見がありました。
 鋭く毒を吐いた
これを書いてしまうのはこの作品上どうだろうか、という意見もありました。

3239 :     冬  吉井 ('09/01/03 23:26:45)
作者は上手い、無意識の中の非合理が隠遁する超現実の萌芽を、なんて言葉はどうでもよくなる列製された配置からの乾いた息に惹かれる部分がある、という意見がありました。床を這う湯気が倒れている妻の背中を濡らす、背中を濡らしているからこの素朴な筆致は成功しているように思えた、一連、というか一作品、短い中に盛りだくさんで、しかし決して読みにくくなく、小腹をすかせていくように突いていく印象が幻想をつかませ、満腹にはなれないし、ここからもう少し読みたいような気もするが、それはそれで魅力がある、という意見もありました。 IIの精神病みはありきたりだが、そこに魅力もある、惹かれるが、惹き込まれはしなかったように思える、という意見もありました。

惜しくも選からは漏れましたが、その他、以下に挙げる作品が注目されていました。

3283 : 走馬灯  時渡友音 ('09/01/23 16:03:07)
これからの作品に期待を抱いてしまう作品であり、作者だ、という意見がありました。悪い背伸びをすることなく自身の言葉を探し、等身大の言葉運びで書かれているだろうことは伝わってきて、その点では好感があるが、まだそこ止まりではないだろうか、という意見もありました。タイトルの時点で内容や進行のほとんどを予想できてしまい、またその点で良い意味での裏切りもないので、そういった面から読後の充足感に対してもっと疑ってもよいのではないだろうか、「走馬灯」という言葉の古さだけが理由ではないように思える、という意見もありました。気になる作者だという意見では一致していたので、これからの作品に無理せず臨んでいって欲しいです。

3253 : 無題  京 ('09/01/12 10:09:10 *1)
ラストの失速がもったいなかった、随所にひかる表現があり今後に期待、パソコンで詩作する人特有の漢字表記がやや気になった、その漢字を、その文字を使うことが本当に適切か、否か、もうすこし意識的になってみるといいと思う、という意見がありました。悪くない、方向性は良質、他者の死を境に生が掘り起こされて自らと自らを作った時間の流れを空間の隙間隙間との記憶に見つめている、[]の言葉の重複をもう少し補ったり、語の付きを定かにしたり、 []の良さを深めたりしても良かったかもしれない、[]、[]で作品の緊張感というか高さが変わる、本筋からの昇華だからといって油断しているように感じる、最後の締めの文章はありきたりすぎる、[]も[]くらいの熱量を見せても良かったかもしれない、という意見がありました。

3299 : 断編―骨の魚  田崎 ('09/01/31 02:12:22)

3281 : ゆらぎ  ともの ('09/01/22 00:10:33)
内実は大いに買う、一貫して作中に続く揺れも、そういった揺れを形式でも試みたのだろうか、もしくは、この形式での緩急は朗読を強く意識して作られた文字列だろうか、ただここは散文でいくか行分けでいくか、どちらかにしたほうがよかったように思う、という意見がありました。「呼吸をする」の連からは良いが、それまでの冗長さはあまり突かないのではないだろうか、作者の魅力である素朴な感性、素朴な純とした作品は無為に壊されてきていて代用が利くものになってしまっては悲しいのではないだろうか、視点の素朴さを日常の狂気に晒してそれを作品にするには代用の利くスピードでは難しいのかもしれない、という意見もありました。

3272 : (無題)  薛茵('09/01/19 14:13:39)
切実さとそれらしさの間にある印象、読み進めるための魅力がもうすこし欲しい、という意見がありました。暗喩であるにしてもないにしても途中までは面白く、感情的に切れをなくしてしまう尾が気になる、という意見もありました。

3236 : うまれるまえに  ひろかわ文緒 ('09/01/01 06:34:08)
もうすこし読み続けたい、うまくいけば化けるタイプだと思う、という意見がありました。悪くない、書きすぎのところをどうにかしてほしい、一・二文、削れば優良でも良いかもしれない、という意見もありました。作者に惹きつけられるけれども予感にまだ留まっている感触でしょうか。これから先が気になります。

3250 : (無題)  桜井 ('09/01/12 04:23:01)
閉じるにしろ、豊かな閉じかたがあるとおもう、これはまだそれに遠い、もうすこし書きこんでほしい、と淡い期待とともに感じる、という意見がありました。無題ではないほうがよいかもしれない、兎は月を想起させていく、暗喩の作品にも取れるが、作者は素直に書いているようだ、短い中に同じ文章が何度もある点など、拡げられなくなっていってしまい、小さく留めているところが気になる、という意見もありました。

3237 : 無題  雨宮 ('09/01/02 09:57:30 *1)
緩やかなこと自体はそれでいいと思うが、それならそれで静かに訴えるために言葉の力が欲しい、この詩にはそれがない、という意見がありました。

3259 : 約束の地  はるらん ('09/01/14 01:34:39 *4)
日本の茶の間から、爆撃戦の被害者という立ち位置で綴ることの意味、作者の普段からのストーリー気質が悪い意味で表出したように思う、この題材で挑むべくする意義が作者にあったのだとは思うが、立ち位置が間違っているように感じるため上澄みにもなり得ていない、という意見がありました。四連が書き変えられても、もう一歩の感が否めない、という意見もありました。

3251 : 黒猫、土鍋、レコードプレーヤー  ぱぱぱ・ららら ('09/01/12 09:27:42)

3294 : 「姥捨山日記」抄2 〜雨水の日の夜〜  右肩良久 ('09/01/28 02:01:43)
惹きこまれる有精の打点が鈍い、前回に比べての失速感は否めない、という意見がありました。

以上です。

現在、年間各賞選考中です。
発表までしばらくお待ちください。

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