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アメ

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


空腹と痩せた猫

  アメ

晴れた日の海沿いの路地には猫が落ちていて
3秒見詰めるとにゃぁと鳴くのだ
と 君が言う

言われたとおりに歩いてみたら
やはり沢山の猫が昼寝をしていて
しかし見詰めたら順番に逃げられた

君は隣で微笑んでいる


この陽だまりの裏側で
わたしは痩せた黒猫を食べ
黒猫は良いよ良いよと鳴く
ちらりと君のことを
海沿いの路地を思い出して
わたしは切なくなるけれど
痩せた猫と一緒に良いよ良いよと喘ぐのだ
何度も何度も
良いよ良いよと喘ぐのだ


さて陽だまりの中

君の髪は金糸の如く日に透けて
この肩を抱き寄せる腕は力強く温かく
ああなんて満ち足りた気分だろうと
わたしはうっとり目を閉じる
しかしなぜだかお腹が空くのだ

黒猫はいつかわたしに咬み付くに違いない
その痩せた腹に飲み込んでしまうに違いない
今は良いよと鳴くだけだけど
いつかは海沿いの路地も崩れて消える


しかしなぜだかお腹が空くのだ
君の横でもお腹が空くのだ


一月の暖炉

  アメ

彼女が妬ましいので冗談のつもりで
暖炉に押し倒すと別珍のスカートに火が付いて
あっという間に燃え上がってしまったのでした

ぺらぺらと彼女への賛美が口を付くわたしは
周囲からの信頼も厚く
くちびるが焼け爛れてしまった彼女は歌うこともできぬので
この身は無実となりました
なんて可哀想な彼女とあの人


ただひとりあの人だけは
私へ疑いの視線を投げます

それがわたしにとってどんなに心地の良いことか
きっと彼は知らないのでしょう
知っていたならわたしのことなど
見向きもしないに違いない


彼女は美しさが失われたことを嘆き
やがて一月の湖に身を投げたのでした
わたしはあまりのことに言葉を失い
嗤い過ぎて嗚咽しました
ああ 呼吸が苦しい

人々は私を慰めますが
ただひとりあの人だけは
わたしを睨み付けるのでした

それがどんなにどんなに気持ちの良い事か
きっと彼は知らないのでしょう


あの人は私を許さないに違いない
やがて全てが消えうせても
わたしだけを許さないに違いない

そう思うと歓喜が身体を駆け巡り
私は嗤い過ぎて嗚咽しました


いつまでもいつまでも
肩を震わせ嗚咽しました

文学極道

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