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選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

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秋子の自殺

  pierce


チエは秋子をミスタードーナツに呼び出した
寒い日だったのに秋子はやってきた
チエは陸上部のいじめについて悩んでいたので
死にたいと秋子に言った
秋子は本当に自殺するひとは
死にたいって言う相手もいないんだよって言う
わたしがいるよとチエに言った
チエは前を向いた

秋子が自殺したのは一週間後だった
チエは秋子を友達だと思っている
チエは秋子の言葉の意味を都合のいいように理解していたかもしれない


カトウくんが秋子に夕方の教室で偶然に会った
カトウくんはipodでなくMDウォークマンを愛用している
MDをとりだすときの音が好きなのだそうで
カトウくんが「そういえば佐々木さん(チエ)がこないだ泣いていたね」と言った
秋子とチエは友達のように見えていた
秋子が「たいした理由でもないのにあのこ自分が世界でいちばん不幸だと思ってるのよ」と憤る
カトウくんは秋子は美人だがとても厳しいひとのように思った
きみの言うことは正論だけれどみんながきみのようにつよいわけじゃない
カトウくんはチエが好きだった

秋子が自殺したのはその1ヶ月後だという


秋子は高校生だったが近くの大学に通う男に恋をしていた
それはだらしのない男であった
けれど秋子はその男と袖ふれあうように知り合い
そして魔法のように惹かれた
男は面倒なことが嫌いであった
元来楽しいことしか見ようとしないものである
女の哀しみはさらさらと受け流し
だらだらと生きていた
秋子は「学校に友達いないんだよね」と言った

秋子は自殺するとき男のことを先ず考えた
私が死んだことを男が知ることはないだろうと思っていた
なにせ名前しか知らないような関係であるので
しかしもし男が自分の死を知ったなら
私が彼の記憶の奥底に眠ることが出来るのだろうと思った


朝のホームルームで担任が
「タカサキの母親が大腸ガンで亡くなった」とみんなに伝えた
みんなは可哀相と言った
ざわざわとバツの悪い空気が侵食した
三智子は言い知れぬ感情が染みてくるのを感じた
ああだからタカサキさんは休んでいたのか
ホームルームが終わった
ユキエが「昨日の情熱大陸みた」と聞いた
三智子はどうしてみんながもう普通なのか
いくら考えてもわからなかった

タカサキ秋子が自殺したのはそれから半年後のことである

文学極道

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