ペガサス
馬鹿なお馬がモンゴルの草原をぱかぱか走っていました。みんなが巡礼の旅でした。でも馬鹿なお馬は相変わらずぱかぱか走っていました。みんなが草原で仲良く食事しました。そんなときも馬鹿なお馬はぱかぱか走って遊んでいました。白い脳味噌の馬でしたから。みんなは草原のような緑色の脳味噌でした。いななくと時々白い脳味噌が耳や鼻から垂れるのでした。それでも元気にぱかぱか。聖地への長い旅を続けて青い丘陵に来たとき、そこは、緑の絨毯一面にオハジキを撒いたようにお花が咲いていました。みんなは旅路を急ぐために草を食み食みいきました。馬鹿なお馬はお花を舐め舐めいきました。みんなは遠くの聖地を眺めて歩いて行ったのに、馬鹿なお馬さんはぱかぱか出鱈目に駆けていたのでした。そしたら、突風嵐の吹き降ろし、馬たちをみんな空へ吹き上げてしまいました。みんなどんどん青い空へ舞い上がり、それから、みんなすうーと落下して、そして丘の草原にボカボカ落ちました。みんな大怪我をしました。しかし、馬鹿なお馬さんはあんまり驚いたのでガンバッて空でぐるぐる夢中で走りました、逆さまにジグザクにパカパカ走り、落ちているのか、駆けているのか、それとも昇っているのかなんかわけがわからずパカパカ走り、白い雲を鼻から吸って、ゼイゼイ言って走りました。ヒンメルヒンメルといなないて。どうしていいかどうしてもよくわからなくて、空の水を漕ぐように雲の波をかくように空を駆けているので、なかなかおっこってこないのかいかないのか。みんなはそれを下からからも上からも見上げて(まだ空のずっと上から落ちてくる馬もたくさんいました)、怒りました。神様を冒涜していると。あんな奴がいたから、嵐が起こったのだと。でも、墜落して足が折れてしまった馬たちは草原に寝そべって恨んでいるだけでした。馬鹿なお馬さんはわけもわからずあんまり走りすぎてもう気狂いになって走り回っています。モンゴルの草原の夕日は沈んでも、草原はいつもとても緑だぞ、だから、草原はいつもとても緑だぞ、緑だぞ、と夜の闇をずうっとどこまでも蹄の音が続いていくのです。オレンジの月光が光る草原の空をもう気がふれて叫びまわって、聖地とは逆の方向へどこまでもどこまでも走っていったそうです。海を渡ったときにそれをギリシャ人が見たそうです。
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- [佳] ペガサス (2007-06)
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