あの子はふたりで手をつないで道ばたでねころがっている、紙のお月さまをはさみで切り抜いて同時にひとつの目を閉じる、だんだんとにじんでいく空はふたりの耳をふさぐと、いまだ雪を抱く山の稜線にぼんやりとかさなり、菜の花畑を走りぬける鉄のでんしゃは汽笛を鳴らし、だれも乗せないでまっすぐ進み、そこの黄色を残し、はるか向こうのちがう黄色へ繋がり、回転しているアップルがふたつ見える夢、アップルの中で回転しているあの子が見えるそれは、回転しているアップルの中であの子は手をつなぐ菜の花畑は、けいれんしているふたりはやがてかたほうの目をゆっくり閉じて耳を、ふさぐと押しつぶされそうになったあの子の声がふたつ上空に幾何学的な、なにかをえがいて高いほうの空にはまだ届きそうな気がするからどこまで、も手を伸ばしていたいどこ、までもあの子につながれていたい夢の中は赤いアップルのしんにかたむいてけっしてだれにも触れられない空にアップルをほうり投げるあの子は痙攣しているいつまでも白い夢、菜の花畑はあの子をふたり空にほうり投げる
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fluke
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- [佳] (無題) (2008-03)
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(無題)
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