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選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

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日々のささくれとやさぐれと春一番

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有楽町駅三田線に乗り換えるエスカレーター下から3段目
必ずぐらっと後ろに体がかしぐ場所があるのをご存知か
私は毎朝そこでそのぐらっと感を楽しんでいるのだが
それはじっと待ち構えなければわからないかすかなかしぎで
今日はうっかり数歩ばかり段をのぼってしまったため
ああと思ったところで時すでに遅しぐらっと感のないまま
後ろ髪ひかれる思いでたったかと三田線に乗り換える
もしも子どもであったならきっと大人に嫌な顔されながらも
「おっといけない」といいながらエスカレーターを逆走し
一番下からやり直していただろうにこんなとき大人は

その一歩が踏み出せない大人は

昨夜は夜中過ぎに電車に乗り込んだところで
朝からヨーグルトとパンしか食べていないことに気がつき
コンビニはもうこりごりだが米炊く気力もなしまあいいかと
いつもの夕食抜きモードでとぼとぼと歩いていると
ふと寿司屋の看板が目に入りなるほどそうかそうか
そういう手もあったかと思い切って引き戸を開ける
らっしゃい・寿司折りください・へい折り一丁
おまたせしやした・はいどうも・ありやとざいやした
片手に寿司折りという大人感に酔いしれる家路
いそいそと吸い物を用意して夜中の寿司とあいなり

その晩餐は大人のというよりオヤジの

今朝会社に来てみれば窓のあかないこのフロアにも
そこはかとなく春が漂いそういえば昨日は春一番だったとか
風の洗礼なく迎えてしまった春が後頭部にラビットパンチ
窓があかないだけでなくブラインドも閉じ気味なこの部屋では
季節どころか朝昼夜の移り変わりさえないということに思い至り
時間も季節も奪われたようないいようのない喪失感にしばし呆然
すっかり風を忘れていた自分が悲しくもあり俄然風が恋しくなり
そうじゃ仕事もどうにかめどが立ちそうなのだからして
今日の昼ごはんは何が何でも外に食べに行こうと思い
思ったところで同じことを考えていた女子に誘われ
くふふと笑う女子はまるで春一番みたいで







タイカレー食べた

文学極道

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