水面を這う燕が、橋の下で金色に反り返る
積み上げられた若草からは
湿った土の生ぬるい温度が
吹き上がる風と混ざり合い、空へ舞っていた
青黒く、東の空に突き抜ける鉄塔
一台、二台、低い音をうねらせ
白のセダンが通り過ぎていく
今や黒点となった鳥の群れは
遥か遠く、ゆるやかに下降を始めている
空の群青に
夜が重なりはじめても尚
残り火に赤く、ひきちぎれた雲が燃えている
手を翳す
そこに無いものを在るものとして
橋の終わりで
生まれはじめた虫の雑踏を散らした風に
下腹部は急速に冷えていく
鐘の音
大気を、割るようにして
帰る場所を伝えるように
どこへも帰れない言葉を
その静けさで
どこまでも響かせてほしい
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- [佳] 夕刻 (2010-06)
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