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平川綾真智

選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

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桜舞う

  平川綾真智

―切り裂かれる烏の血が
空一面に固まり夕焼けとなる
解るだろう? そうだ、世界の終わりが訪れたのだ
ああ しかしこの赤銅の風景
なんと滑らかに 今日を導いて来たのだろう!
敷かれた線通りに遂に
訪れたのだ 終末が
劇場を出てからも未だに 劇中、男優の叫んだ台詞が
耳の中で響き続ける。
青信号の音楽は 叫びを掻き消すことなく途絶えて
横断歩道の向こう側 無邪気に手をひかれ歩く幼児の
ハシャギ声も遥か遠い。
私は歩道に沿う街路樹を見て いつも通りの今日という日を
その風景の中、噛み締める


 一枚一枚、陽を透かし眩い 無骨な茶を押す花弁の淡紅
 支える背景と白じむ空へ 雲は輪郭を無くして溶け入る
烏が枝の茶に分け入り止まると
子供はハシャギをカン高くした

世界が終わる日の風景は
今日と同じであるに違いない。
何の伏線もあるもんか
誰かが叫ぶことなどなしに
突然終末は訪れる
滑らかに赤銅に染まりなどせず 解る間も無く訪れるんだ
いつも通りに沿う今日を 
噛み締める風景のその中で

信号を渡るとすれ違い様
―バイバイ。 カン高い声が聞こえた
振り返り見れば、母に手を引かれ
はしゃぎは信号の音楽に混ざる。
街路樹が風に擦れ、散り行き音を増やす花弁
耳から消えた劇の叫びに
私は今来る終末を思う。
眼前桜舞うこの瞬間 不安は切り裂かれずに固まり
飛び立って行く烏の羽音が
音を溢し、
耳の中に響いていく

文学極道

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