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まおん

選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

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きんぴらごぼう

  まおん

 まず土の付いた皮をこそげる

泥の匂いがたちこめる
皮が排水溝の網の目に詰まる
ずっと、苦手だったこと
ごぼうって
山の麓の茅葺屋根の色 
もみじ を口ずさんでいたら
瞼に浮かんだ

 ささがきにする

この作業がどうも、ね
母は白い手が冷たさで真っ赤でも
おかまいなしに
しゃっ しゃっ しゃっ しゃっ
今は私も冷かろうが熱かろうが、動じることはない
ただ、無彩色な過程の前では
まだ子供のままだった

 鍋で人参と炒め煮にする

母と食卓を共にした
私が煮物を出したら
きつねにつままれたような、顔
他でもない、あなたがやっていたことにすぎないのに
やっとわかった
彼女が歩いていた場所は 
「人」という名の動物の営みの場所だったのだ

 水分が煮詰まってくる

大地の裏側で栄養をいっぱいにした
草の根を
食べやすく味付ける
女が、きんぴらごぼうを炊く
ただそれがそこにいる理由
自然の営みとして

 食卓に並べる

息子が選ぶだろう、女性
(咲いたばかりの菫のような)
きんぴらごぼうを
炊ける人だろうか


夕陽に染まった 茅葺屋根の色の

文学極道

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