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ピンクパーカー

選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

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火の子

  ピンクパーカー

街と鳥と船と声
砂と雲と昼と星

四角形に切り取られた木の葉の端、
そこから銀色に塗られた海が静かに流れ出す
喉の振動が髪を結う
3メートルの直線距離

影の形をした虫の心臓
腕から伸びる一本の葦に牛の鼻輪は繋がれる
溶け出した蝋が再び固まるまでの猶予の間、
鳥色の傘は閉じられて開かれる

森の地下を這う根の繁みが
足音を見つめていく
屈折した太陽光を浴び
眠りは地上に逆さの雨を描く

執刀医の手にアルコールは滲む
穴の開いた風に運ばれて
永久凍土は動き出す
蜘蛛の巣を伝う一筋の光が
火の上に落ちる

引き裂かれた蛙を黒煙が包み、
湖は森の底に沈む
Hと発音された貨物船と概念的な塩胡椒
木製の杖が老人の手の下にぶら下がると、
花の茎は音もなく崩れ去る

草の息の根
2月生まれの健康診断表は
黒い蜜の上を巡る
呼吸は繁殖を繰り返す
臍の緒が路面を封鎖する

望遠鏡の凹に歌が溜まる
白鳥の講壇での演説
時速12kmが目を閉じる
吐き出す 瞼の上の車輪

揺り籠に入る
甘く染まった包帯が
赤い香草を噛み砕く
電気信号に喩えられた夕闇の色素に向かって

針金に吊るされる金管楽器のように
螺旋状の暗室を裸足の水槽は駆けていく
二酸化炭素混じりのスープ
雪景色 写真の中の

乗算と季節同士の会話
萎れた三つ葉が脂の上を泳ぐ
そして立ち止まる
赤外線に縫われた洋服屋の前で

時は瀕死だ
食卓に並ぶ記憶喪失が
いつの日か国際電話に代わるだろう
そして人は涙を数える

187
鋭く尖った鉛の国
胸ポケットの中身には景色がある
卵巣の飛散した無口なオレンジの恒星

文学極道

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