夜明けが追いかけてくる、
終幕ののちに──
冬の叫びが劇場を駆け巡り、
顔のない俳優がコートを羽織る。
しおれた花束が客席を賑やかし、
スポットライトの熱は、とうに冷めきった。
「真実も、嘘も、大げさな戯曲も、
長ったらしい独白も、もうたくさん。」
老女優は煙草を吸いながら、そう嘯く。
煙は暁に染まり、
赤い絨毯の上に、灰が白く光っている。
緞帳は確かに愛を孕んでいた。
しかし、書割の世界は全て凍ってしまった。
月が沈み、星々の葬列を見送ったあと、
冷たい太陽の下で、我ら観客は漂う、
孤独の遠い海を。
──台詞を奪われ、魂を忘れ、形もない「主役」に、
神々を見いだすものなど、もはや誰もいないのだ。
選出作品
作品 - 20201102_230_12192p
- [佳] 冬の劇場 (2020 リライト版) - GROWW (2020-11)
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冬の劇場 (2020 リライト版)
GROWW