選出作品

作品 - 20200917_083_12116p

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Time is in my reality

  深尾貞一郎

無数の定点カメラに映る映像のように、
赤く点滅する経験の数だけ現実はある。
地下鉄に乗る腕時計をした群衆がそうだ。
行きかう無数のイメージの数だけ現実がある。

総人口77億人の亡霊的な世界と、
平均年齢30.9年間の個人的な記憶のこと。

ひとつの学説にすぎないが、
アフリカ象の過ごした午睡の時間と、
二十日鼠の生きた時間との間に相対性があるという。
人もまた、心拍数に応じた時間のレールを持っている。
記憶がその中を行きかい、やがてその流れを土砂のように覆う。

川沿いの土手を走る子が手をのばす赤とんぼの、
赤い粒子になった空間を見ている私の記憶の群れのこと。