選出作品

作品 - 20200907_746_12096p

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レギュラータイプ

  自由美学

あのいい加減なルールを発見したら始まるんだ

俺に今必要なのは友達じゃない
テレビの世界平和じゃない
健康診断の結果じゃない
隣人は毎朝ウチの玄関扉を蹴っ飛ばして行くが
俺に今いちばん必要なのは
あれを諦めてしまうぐらいのメンタルだ

バイト先のピザ屋では万年トッピング係
雑居ビルの窓々からは粘っこい黒煙が立ちのぼり
放置自転車ひしめく路地裏で
焼けた脂の匂いに今日も打ちひしがれる
暗転したスマホ画面に映る俺の顔まで
パチンコ店に列を作る客らと同じ湿度でやりきれない

バイト帰りにいつもの立ち飲み屋で後輩がつぶやく
「落花生のさやがたまに空っぽなのは、
虫たちが寝床に困らないためですよね?」
落花生の殻をメリメリと剥く後輩の肌は幼虫みたいに青白い
「それないやろ」
メリメリメリ メリメリ
「ほら、またありましたよ! リアルカプセルホテル」

ー世界ってそんなに優しかったかよ

俺たちは少しずつ思い出している
窓の外に いつもの街に もぐり込んだ布団に
許し合うゲームをまた思い出そうとしている

確かにあるかもな
今度はそんな当たり前の奇跡を信じるよ
認めたいんだ当たり前に